今週、2年に1度のワールドカップがオーストラリアのキングストン・ヒースGCで行われる。日本からは松山英樹(24=LEXUS)と石川遼(25=CASIO)の2人が、日の丸を背負って戦う。

 直近1か月で4戦3勝と好調の松山。一方の石川も10月末のCIMBクラシックでトップ10入りを果たしている。そんな2人は、大会の前週から同会場で練習ラウンドを行うなど調整も順調だ。


●ワールドカップのカギを握るのはチーム力


 8月に行われたリオ・オリンピックは、通常のトーナメントと変わらず個人のストローク戦だった。「国の代表として戦っているのに、代表同士がバラバラの組でチームの要素が少なかった」という声が聞かれ、試合の形式に課題を残した。

 しかし、今回のワールドカップは1つのボールを交互に打つフォアサムと、それぞれ別のボールを打ち良い方のスコアを採用するフォアボール形式で行われる。当然、代表選手同士は4日間同じ組でラウンドするため、”チーム力”の要素が順位に与える影響は大きい。


●個人戦よりもメンタルが問われる


 チーム戦は個人戦よりも、メンタル面のタフさが問われる。

 アマチュアの人でもティーショットの前にホール図を眺めて、ルートや打数のイメージを描くはずだ。プロはそれをより緻密に戦略的に組み立てる。時にはティーショットの落としどころを1ヤード刻みで考えるし、ピン位置や風の状況次第でコースマネジメントを変更する。フォアサムの場合は、あらかじめチームで戦略を立てるものの、相手の打つボールによって自分の状況が逐一変化をする。

 もちろん通常のストロークプレーで自分でミスをした場合も、マネジメントの変更を強いられるのだが、自分1人の場合はミスの度合いも考慮に入れてプランを立てられる。

 これがチームになると、各ショットにおけるミスの可能性や、そのショットの狙いをチーム同士で共有した上で戦略を立てる必要がある。「こんな状況から打つことを全く想定していなかった」ということがないように、密にコミュニケーションを取るのだが、4日間もあれば必ずそういった状況に遭遇する。その時にいかに平常心でベストパフォーマンスが出せるかが、スコアを左右するカギになるのだ。


●プロにもある、合うペアと合わないペア


 9月末に行われたライダーカップの取材に行ったとき、チーム力の影響の大きさを感じることができた。先日のダンロップフェニックスで池田勇太の追い上げを振り切り優勝したブルックス・ケプカ。その日はブラント・スネデカーとのペアリングでフォアサムを戦っていた。

 あるパー4のセカンドショットでケプカがシャンクをしてしまった。勝負がかかる大事な場面でスネデカーにとってはさすがに想定外の事態だったはずだ。しかしその後のショットをスネデガーがナイスリカバリーし、引き分けとした。そのスネデカーのショットで年下のケプカはどんなに救われたことだろう。逆にスネデカーは、そのホールのスコアもさることながら、ケプカの心中を想像し「絶対にミスしてはならないショット」というプレッシャーもあったはずだ。

 スネデガーのナイスリカバリーでリズムを取り戻したケプカは、次の200ヤード超のパー3でティーショットを30センチに付けるスーパーショットを放った。シャンクの後のアイアンショットは非常にナーバスになるものだ。そこでスーパーショットを放つケプカの強心臓ぶりに驚かされたが、このショットはスネデガーが作り出した良いリズムが生み出したショットと言っても過言ではないだろう。

 また、注目を集めたパトリック・リードとジョーダン・スピースの組み合わせ。アメリカ選抜では「エース」の組だ。リードは試合中、感情を表に出して自らを鼓舞し、大きなジェスチャーで観客を巻き込みながらプレーをしていくムードメーカータイプである。一方のスピースは比較的、淡々とプレーに入っていくタイプだ。正反対のタイプの2人だったが、序盤からリードがスーパーショットとパフォーマンスでスピースを引っ張っていくようなシーンがよく見られ、アメリカ選抜の勝利に貢献した。

 逆にヨーロッパ選抜のベテランのヘンリク・ステンソンと、若手のマシュー・フィッツパトリックのペアリングでは、黙々とショット重ねるステンソンに対しフィッツパトリックが遠慮がちになってしまい、最後まで力を発揮できていなかった。それを象徴するようにフィッツパトリックの池ポチャで終戦を迎えた。


●ペアリング次第でスコアを崩すアマチュア


 プロのようにメンタルのトレーニングを行っていないアマチュアの人は、チーム戦でなくてもペアリングによってスコアを崩すということがよくある。

 多く見られるのが先述のフィッツパトリックのように、目上や自分よりもレベルが高い人に気を使ってしまうタイプの人だ。

 たしかに接待などもある通常のラウンドであれば、細かな”気遣い”は必要だ。しかしプレーに入った際は目の前の1打に集中すべきだ。いつも以上に急いだり、ルーティンを変える必要はない。いつもと違うリズムになることでパフォーマンスに影響が出てくるからだ。

 以前、競技に出ているアマチュアの人から相談を受けた事がある。

「今回は初めて参加する試合だし、うまい人を見て勉強しようと思っています」

 少し厳しいが、正直そんな考え方ならわざわざ試合に出る必要はないと、アドバイスをさせてもらった。試合中は学ぶ場ではない。同伴が誰であろうが気後れすることなく「自分のベストのプレーをする」姿勢が必要だ。ゴルフでは他人を意識しすぎるべきではないが、強者を倒そうとするメンタリティーがあるくらいがちょうどいい。それこそが成長を促し、上達につながる。

 もちろんスロープレーなどは厳禁だが、自分の打順の際はあくまでも自分中心に物事を考えるべきだ。そういった日本人が苦手な”図々しさ”をいかに出せるかが、今回の日本チームの活躍のカギになるかもしれない。


 ◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招請し、レッスンメソッドを直接学ぶ。ゴルフ先進国アメリカにて米PGAツアー選手を指導する50人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を学び研究活動を行っている。早大スポーツ学術院で最新科学機器を用いた共同研究も。監修した書籍「ゴルフのきほん」(西東社)は3万部のロングセラー。オフィシャルブログ http://hiroichiro.com/blog/


(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)