取り巻く環境は、選手を成長させる肥やしになる。
サッカーW杯ロシア大会に臨んでいる日本代表の本田圭佑、長友佑都、岡崎慎司らは86年生まれ。この北京五輪世代には吉田麻也、香川真司らも含まれる。かつて、プロ野球を賑わせたのは松坂世代だった。水泳には小学時代からしのぎを削ってきた萩野公介と瀬戸大也のライバル物語がある。そして、女子ゴルフ界でも、98年生まれの黄金世代が、急激に力を付けつつある。

- プロ初優勝を飾った黄金世代の河本結(2018年6月29日撮影)
6月末にあったステップアップツアーのスカイレディース・ABC杯(日刊スポーツ後援)で、プロ初優勝を飾ったのは黄金世代の1人である河本結(19=エリエール)だった。悪天候のため、29日の第3ラウンド(R)が途中で中止となり、前日の第2Rまで通算5アンダーで並んでいたイ・ナリ(29=韓国)とのプレーオフを制した。
彼女は日体大2年で、見た目は今どきの女子大生。だが、人並み優れる向上心を持ち合わせていることは、3日間の取材で感じることができた。
「絶対に世界に出て行きたいです。米ツアーでやりたいんです。同級生には、ライバルがいっぱいいる。本当は目をつぶりたくても、しっかり見て、今の自分との実力差を埋めていこうと思いながら、やってきました」
国内のレギュラーツアーには、アマチュア時代の15歳でツアー優勝を経験している勝みなみを筆頭に、新垣比菜、小祝さくら、三浦桃香らがいる。

- プロ初優勝を決めた畑岡奈紗はガッツポーズ(2017年9月24日撮影)
畑岡奈紗は早生まれの99年1月生まれだが、黄金世代と同学年にあたる。6月の米ツアーで初優勝を果たし、勢いをつけて挑んだ全米女子プロ選手権では劇的な優勝争いを演じた。一時は優勝が絶望的になりながら、畑岡は7月1日の最終日に64を出して首位を捉えた。プレーオフの末に初のメジャー制覇は逃したが、日本の19歳が、世界の頂に手をかけるところまで迫った。
その畑岡に、河本は大きな刺激を受けた。
高校進学の際、生まれ育った愛媛を離れ、茨城県にある日本ウェルネス高に進んだ。そこで、茨城で生まれ育った畑岡と親好を深めた。国体の合宿で一緒に風呂に入った時のこと。時計を見ながら熱い風呂につかり、しばらくすると冷水に体を沈める。そんなことを繰り返している姿を見て、不思議に思って尋ねた。
「何で、そんなことをしているの?」
すると、畑岡はこう答えた。
「明日にね、疲れを残したくないから。こうすると、疲れが体に残らないんだよ」
当時、まだ中学を卒業したばかりの15歳だった。食事会場でも、食べ物にまで気を配っていることを隣で見てきた。
「ナサ(奈紗)は、私たちと全然、ゴルフに対する向き合い方が違いました。お風呂で、みんなでガールズトークをしながらも、ずっと交代浴を繰り返していた。食べ物も好きなものを食べるのではなく、体を酸化させないようにとか、疲れないようにということを考えていました」
高校の途中で、河本は愛媛に戻ることになってからも、つねに畑岡を意識し続けていたという。
編入した松山聖陵高の同級生には、プロ野球広島のアドゥワ誠投手がいた。5月30日の西武戦でプロ初勝利を挙げた際に祝福メールを送ると、こんな返事が返ってきた。
「お前もガンバレよ!」
周囲の環境が、枯れることのない向上心をもたらしてくれている。
河本には大きな夢がある。本来であれば学業との両立は難しいが、時間を見つけては在籍する日体大に通いながら、プロとしてゴルフの腕を磨いている。それも、夢を追い続けるために、必要だと信じているから。
「五輪にも出たい。世界の舞台で、戦う選手になりたい。大学には女子ラグビーの日本代表や、水泳のパラリンピック代表の選手がたくさんいて、刺激をもらっています。ナサ(畑岡)からも、すごく刺激を受けている」
いつか、畑岡と世界の頂を争う日は、訪れるだろうか-。下部ツアーからはい上がるシンデレラストーリーを、楽しみにしている。【益子浩一】


