オフだし、時間もあるので座学でも…と2019年1月施行の「ゴルフ規則」を、日本ゴルフ協会のHPからダウンロードした。さて、その規則1「ゲーム、プレーヤーの行動、規則」の最初にすばらしい言葉が並んでいるではないか。

「コースはあるがままにプレーし、球はあるがままにプレーする」

「規則に従い、ゲームの精神の下でプレーする」

「規則に違反した場合は、マッチプレーの相手やストロークプレーの他のプレーヤーたちより潜在的な利益を得ることがないように自分自身で罰を適用する責任がある」

意訳すれば「球に触らず、ずるせず、正直に」というところ。審判を置かず、自己判断し、自己責任に帰結するゴルフ競技の本質でしょう。

コロナ禍の大会は今後も多くの制約を受けそうです。開催しても無観客。日本のプロゴルフ大会のほとんどが、主催者からの資金提供で収益が完結し、入場収入に大きな比重がないとはいえ、無観客はプロスポーツとして異常。有観客へのシフトは今後の重要な課題でしょう。ただ、その他の制約は逆に今後もある程度継続して“利用”すればいい、ゴルフ界をより良くするチャンスととらえればいいと思います。

現在は以下のような制約があります。

#クラブハウスへの入場は選手のみ。

#専属コーチ、トレーナー、マネジャーはコース敷地内にも入れない。

#車を運転できない選手の運転手だけ、駐車場にまで立ち入れる。

関係者のコース敷地内やクラブハウスへの出入り禁止は厳しすぎるかもしれませんが、少なくともプレー中の選手に接触できない環境は望ましい。ゴルフは他のスポーツより自立心、自制心が求められる競技。相談相手はキャディーだけで、第三者の助言は受けられません。受けたら、2罰打。最悪なら失格。そんなグレーゾーンをなくせます。

コロナ禍以前の大会では、よくこんな光景がありました。ハーフターンで次のスタートまで調整時間がある時、選手とマネジャー、トレーナーらと会話を交わす。特製ドリンクやおにぎりなどを手渡す。ドリンク等はプレー中もロープをはさみ、キャディーに渡す。その際メモを渡すことも可能でしょう。選手がドリンクや軽食を補給したいなら、クラブハウス内に冷蔵庫などを置き、そこに用意しておけばいい。要はスタートホールのティーオフから18ホールの完了まで、選手と第三者を接触させない。周囲が疑惑を持つ可能性のある状況を排除する。「李下(りか)に冠を正さず」の精神です。

選手らがコース内に携帯電話を持ち込むのもどうでしょう。トイレ、ハーフターン時に参考となる動画、メッセージなどを見れば、規則4・3a「認められる、禁止される用具の使用」の(4)「オーディオとビデオ」に抵触します。大会側がスタート前に全選手の携帯電話を預かり、ホールアウト後に返却すれば対処できる話です。

ゴルフ界、特に女子では「黄金」「ミレニアム」「新世紀」と若い世代の台頭が顕著です。年齢は20歳前後。ジュニア時代からゴルフ一筋で、一般的な社会生活をほぼ経験せずに来た選手も少なくありません。「チーム○×」を作ることは悪くない。ただ、強いゴルファーであると同時に、成熟した社会人になるには、過保護な環境は好ましくない。選手の自立心を高めるためにも“コロナ禍トーナメント”はいいきっかけになると思うのです。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)