「100メートル走10秒8」の脚力、バネを持つアマチュアがいる。高校ゴルフの強豪・滝川二(兵庫)で主将を務めた藤井想大(ふじい・そうた、3年)で今春、日体大に進学する。昨年アマチュアでツアー優勝を飾り、今年のマスターズ、全米、全英両オープン出場権を持つ同大学の中島啓太らの背中を追い、将棋4冠の藤井聡太と“同名”の男が将来のブレークを狙う。
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日本では、いわゆる運動神経のいい少年の多くが野球、サッカーなどに流れてきた。ゴルフでは少数派。元甲子園優勝投手でプロ野球も経験した尾崎将司は周囲を見渡し「体の弱いヤツしかゴルフをしない」と嘆いたものだ。今でこそジュニア界の充実で、プロを目指す人口が増加したが、松山英樹のように世界と渡り合う可能性を感じさせる者となると、やはり少ない。
藤井は貴重なダイヤの原石だ。兵庫・姫路市立白鷺(はくろ)中3年の夏、陸上部の記録会で100メートル、10秒8をマークした。
「ゴルフのために下半身を鍛えようと陸上部に入ってました。だから、部活に出るのは朝練と放課後練習を週に2回ぐらい。たまたま出た練習でそのタイムが出たんです」。陸上部の大会出場は400メートルリレーで1度走っただけだ。
なぜゴルフだったのか? サッカーをする友人に誘われて断った。団体競技が「苦手」だった。テニス、水泳もしたが「目標が…」とピンと来なかった。ゴルフは違った。白鷺小4年の時、父邦彦さんに連れられ、練習場へ。後に滝川二の4年先輩になる中沢大樹(現大院大3年)がいた。「こんな球が打ちたい」。そんな憧れが決め手だった。
藤井が白鷺中2年の時、滝川二の角谷真吾監督が、中沢から「すごい子がいて、ウチに来たいと言ってます」と聞かされ、足を運んでみてすぐ声を掛けた。角谷監督は「よう飛んでました。290ヤードぐらいかな」と笑って続けた。「でも、すごく荒かった」-。
滝川二のラウンド練習は六甲国際GCのパブリックコースが多い。飛ばし屋には狭く、藤井はドライバー(1W)を握りたがらなかったが、角谷監督は「絶対握れ」と1W縛りを厳命。藤井は「OBばっかり。1ラウンドで4発はありましたね」と振り返る。我慢の成果は徐々に表れ、3年になり「コンスタントに、フェアウエー真ん中を狙える距離が320ヤード、コントロールショットが310ヤードぐらいになった」という。
ツアー出場はまだ2回しかない。初出場は昨年10月のバンテリン東海クラシックで、予選通過して63位。同11月のマイナビABC選手権はマンデー予選会を突破したが、本戦は予選落ちした。ただ、バンテリン東海クラシック期間中のドライビングコンテストに“始球式”を務め、313ヤードを計測。1位C・キムの333ヤード、2位亀代順哉の331ヤードなどには及ばなかったが、潜在能力の高さを証明した。
年をまたぎ、体は大きくなった。体重は5キロ増の87キロ。飛距離もさらに伸びた。「振ったら350ヤードぐらいの手応えが出てきました」。「ふじいそうた」という名前も、話題性になる。「なんで“想大”やったんかよくわからんのですけど、父は“タイミング良かったなあ。(将棋の藤井と)年もそんな変わらんし”と喜んでます。ありがたい名前です」。
100メートルを10秒8で走る“ふじいそうた”が今後、ゴルフの超新星になるかもしれない。【加藤裕一】
◆藤井想大(ふじい・そうた)2003年(平15)7月10日、兵庫・姫路市生まれ。ゴルフは姫路市立白鷺(はくろ)小4年から。主な成績は昨年の全国高校選手権(団体)3位、日本ジュニア16位。滝川二では、同級生で昨年オーガスタ女子アマ優勝の梶谷翼とはゴルフ部で男女の主将を務めた。好きなクラブはロングアイアン。目標のプロはコリン・モリカワ。178センチ、87キロ。


