熊本県益城町出身、熊本市在住の永野竜太郎(27=フリー)は、1打差3位に終わった。4打差2位から出て7バーディー、2ボギーの66で回って、通算12アンダーの272。ツアー初優勝こそならなかったが、熊本に勇気を与えるプレーぶりだった。

 最終18番、6メートルのバーディーパットを前に、永野は「(弱気に)ショートはできない」と思ったという。球が最後の一転がりでカップに沈むと、スタンドからの温かい拍手と声援に包まれた。「国内初戦にしては上出来です」。プレーオフ行きには1打及ばなかったが、さわやかな笑顔で胸を張った。

 2番で3メートル、3番で4メートルのバーディーチャンスも、パットが入らなかった。朝の雨でグリーンが重く、タッチが合わなかった。「いつもなら弱い自分が出そうになる」悪い流れ。「今日も出そうだった。でも、ゴルフの試合くらいで…。地元に比べたら、と自分を強くもっていけた」。被災した故郷を思えば、泣き言は言えなかった。

 首位と6打差でハーフターンすると、10番で日本ゴルフツアー(JGTO)の新会長になった青木に声をかけられた。「大変かもしれないけど、熊本のために、笑顔で頑張ってこい」。がっちりと握手も交わし、「背中を押された気がします」。一転インでは息を吹き返し、6バーディー、1ボギーの31とチャージした。「少なからず今週は不思議な力が働いてくれた」。ボールがカップに近づくたびにギャラリーから「入れ!」の声が重なり、球に力が伝わるような場面が何度もあった。

 中学時代まで過ごした益城(ましき)町は14日に震度7を観測。16日には自宅のある熊本市でも被害が拡大した。母益美さん(54)らは「家は大丈夫だけど、車の中の方が落ち着く」と、2日連続で車で夜を明かした。過酷な状況の中で必死に耐える人々の姿に「逆に自分も向こう(地元)から力をもらった」という。

 この4日間は「忘れられないと思う」。全力は尽くした。同時に勝ちたい気持ちはより高まった。「それは自分のためにも、地元のためにも」。故郷を思い、勝利を目指す。その気持ちは「今週だけではなく、これからもずっと…」。いつか必ず、できるだけ早く、熊本に勝利を届ける。【岡田美奈】

 ◆永野竜太郎(ながの・りゅうたろう)1988年(昭63)5月6日、熊本県益城町生まれ。茨城・水城高2年時に日本アマで金庚泰に敗れて準優勝。東北福祉大2年時に出場予選会に挑み、09年プロデビュー。12年に賞金ランク62位でシード獲得。14年スリクソン福島オープン、昨年日本ツアー選手権で2位。181センチ、85キロ。