世界最高峰スーパーラグビー(SR)に日本から参戦しているサンウルブズのWTB山田章仁(30=パナソニック)が、日本人初の3トライを挙げた。個人技を駆使して前半だけでハットトリックを達成し、チームは15点リードで折り返したが、31-32でチーターズ(南アフリカ)に惜敗。開幕戦から連敗となったが、勝利への可能性を示した。次戦は19日、東京・秩父宮にレベルズ(オーストラリア)を迎える。

 勝てる。誰にもそう思わせた3トライだった。前半3分。山田は敵陣右22メートルライン付近でパスを受けると、軽やかなステップで1人を抜き去る。インゴールへ一直線。ゴール前で相手のタックルをひとっ飛びでかわし、派手な自身SR初トライを奪って先制した。

 1点差とされた13分も同じ位置でパスを受け、1人かわして右隅へ疾走した。ライン外へ押し出そうとする相手のタックルをいなすため、今度は右隅へダイブ。14-13の34分は中央を独走、余裕のジャンピングトライを決めた。日本人初のSR1試合複数トライどころか、前半だけでハットトリックだ。韋駄天(いだてん)の貯金でチームは残り9分までリード、初めての勝ち点も手にした。それでも山田は「まだ勝っていない。勝ちを届けたい」と満足しなかった。

 「今やらないでいつやるんだという気持ち」。発足時、山田は声を大にした。下馬評は、1勝できるかどうか。そんな中、海外チームのオファーを断って未知数のオオカミ集団に加わった。試合を最も盛り上げる、トライを取る場所に立つ。魅力を伝えたい。3トライとも、派手に飛びこんで右手を突き上げた。

 学生時代からカリスマだった。慶大時代、ある時は長髪をなびかせて走った目立ちたがり屋。海外志向が強く、「世界が注目してくれるように」とあえて派手なスパイクも履いた。転機は12年の年の瀬。山田は南青山のカフェで、日本代表の指揮官になったジョーンズ前日本代表ヘッドコーチ(HC、当時)に厳しい評価を受けた。「このままいけば、お前は“髪とスパイクが派手なやつ”で終わりだ」。ミーティング後の午後9時、山田はジムに直行した。実力で認めさせる。約1時間、浴びせられた言葉は全てノートに残した。髪は短く切りそろえ、素朴な白いスパイクに変えた。

 W杯イングランド大会ではサモア戦の「忍者トライ」で沸かせたが、目の前にはいつも圧倒的人気を誇るFB五郎丸がいた。いつか自分が一番輝くんだ。口には出さず、リオデジャネイロ五輪に出場する7人制ラグビーも両立してチャンスをうかがってきた。

 この日、山田はグラウンドで他の誰より華やかだった。誰にも文句を言わせない3トライ。サンウルブズに山田あり。プレーで見せつけた。今はもう派手な髪形もスパイクも必要ない。

 ◆山田章仁(やまだ・あきひと)1985年(昭60)7月26日生まれ。福岡県出身。ポジションはWTB。5歳からYMCAラグビースクール(現ヤングベアーズ)でラグビーを始める。福岡・小倉高、慶大、ホンダをへて10年から三洋電機(現パナソニック)。12年にはノジマ相模原ライズでアメフットもプレー。14年はSRのフォース(オーストラリア)へ。W杯イングランド大会ではサモア戦でトライ。181センチ、90キロ。代表キャップ数は15。

 ◆スーパーラグビー 南半球の強豪国、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカに拠点を置くチームが争う世界最高峰リーグ。今季は18チームで行われる。各チームが1次リーグ15試合を戦い、プレーオフ進出を目指す。日本のトップリーグとは時期が重ならないため両リーグに登録するケースが増えている。

 ◆スーパーラグビーの勝ち点 順位決定は勝ち点によって決まる。勝ち=4点、引き分け=2点、負け=0点。また、ボーナスポイント(BP)として、相手よりもトライを3つ以上多く取ったチームに1BP、7点差以内の敗戦チームに1BPが与えられる。昨季までは4トライ以上のチームにも1BPだったが、今季から変更された。