毎週火曜日付の「東京五輪がやってくる」。今回から新企画「アスリートの視線~GoPro動画より~」を始めます。日本のトップ選手がアクションカメラとともに競技にトライ。トップ選手だけが見る景色を紙面と動画で届けます。第1回は16年リオデジャネイロ五輪代表の競泳女子バタフライ長谷川涼香(20=東京ドーム)。自己記録2分6秒00は昨年世界選手権優勝タイムを上回る期待の20歳が、頭部にカメラを装着してトップスピードで泳ぎました。【取材・構成=益田一弘】

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「これ、外れないですかね?」。長谷川は頭部にGoProをつけて首を上下に動かした。スイムキャップ→GoPro→スイムキャップでカメラを固定して、泳ぎ始めた。オリンピアンはどんな景色の中で戦っているのか。素朴な疑問に答える新企画の先には、驚きの光景が広がっていた。

GoProを装着し笑顔を見せる長谷川
GoProを装着し笑顔を見せる長谷川

なによりも速い。長谷川の100メートル自己記録は58秒30、200メートルは2分6秒00。時速6キロ強で水中を進む。プールサイドの撮影者は小走りでないと追いつけない。そのスピードでぐんぐんと壁が近づいてくる。長谷川はGoProの動画を確認して「いつも見えているのと同じですが、こんな画像では見たことない」。


<1>水面に顔を出した状態=息継ぎ 

<1>息継ぎ
<1>息継ぎ
<1>息継ぎ=長谷川の目線
<1>息継ぎ=長谷川の目線

<2>水中に入る=潜水開始 

<2>潜水開始
<2>潜水開始
<2>潜水開始=長谷川の目線
<2>潜水開始=長谷川の目線

<3>水の抵抗が少ない姿勢をつくる。真っすぐ伸ばした両腕が視界に入る

※両手を伸ばし水の抵抗が少ない姿勢

※同じ角度で2~3メートル先を見ている

<3>両手を伸ばし水の抵抗が少ない姿勢をつくる
<3>両手を伸ばし水の抵抗が少ない姿勢をつくる
<3>両手を伸ばし水の抵抗が少ない姿勢をつくる=長谷川の視線
<3>両手を伸ばし水の抵抗が少ない姿勢をつくる=長谷川の視線

<4>ひじを立てて水をキャッチ=浮上準備 

<4>浮上準備
<4>浮上準備
<4>浮上準備=長谷川の視線
<4>浮上準備=長谷川の視線

<5>再び水面に顔を出す=息継ぎ 

<5>息継ぎ
<5>息継ぎ
<5>息継ぎ=長谷川の目線
<5>息継ぎ=長谷川の目線

この動作を繰り返す。長谷川は「泳いでいる時はひたすら壁が近くなってくる感覚しかないです」と笑った。

長谷川は泳ぐ時、あごを同じ角度でキープしている。「いつも2~3メートル先を見ています。水の中でも水の上でも同じです」。水面であごを上げると背中が反って体が沈む。父の滋コーチも「目線は真下ではなくて少し前。頭の上下はないほうがいい。自分から水面にあごを上げにいくと、背筋が力んで反り身になる。背中のラインを平らに保つことが大事」と説明した。

長谷川は本命の200メートルで自己記録を出せば、東京五輪でメダル可能な存在。五輪に集う超人たちの視線の先では、想像を超える争いが展開されている。


◆競泳の代表選考 日本選手権(4月1~8日、東京アクアティクスセンター)での一発勝負で決める。同決勝で日本水連が定めた派遣標準記録をクリアした上位2人が五輪代表に内定する。長谷川の本命種目である200メートルバタフライは派遣標準記録2分8秒43。


◆長谷川涼香(はせがわ・すずか)2000年(平12)1月25日、東京都生まれ。競泳コーチの両親の下0歳からプール通い。高2の16年リオ五輪から4年連続で日本代表に選出。200メートルバタフライの自己記録は2分6秒00。166センチ、59キロ。

自身の泳ぎをゴープロで撮影した競泳の長谷川
自身の泳ぎをゴープロで撮影した競泳の長谷川