ラグビーの全国大学選手権は2日に東京・国立競技場で準決勝が行われる。

初の決勝進出を目指す関西王者の京都産業大は、早稲田大(関東対抗戦3位)と対戦する。就任から2季連続で4強へと導いたOBの広瀬佳司監督(49)を支えるのは、日本代表でも一緒に戦った元木由記雄GM(51)だ。京産大にコーチとして招かれてから10年目。悲願の日本一への思いを聞いた。【取材、構成=益子浩一編集委員】

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上賀茂神社の北にある京産大の練習場からは、比叡山がくっきりと見える。底冷えのする年末。元木GMは広瀬監督らとともに、次の対戦相手である早大の分析作業を進めていた。

「早稲田はテンポが速い。いい選手がたくさんそろっているし、弱点だったスクラムを強化しているので一瞬たりともスキを与えられない。広瀬とは現役時代からやってきて、こうやってまた力を合わせてやれるのも何かの縁ですね。僕は彼をサポートする立場。また一緒になったからには、日本一を目指したいという思いが強まっています」

1995年のワールドカップ(W杯)。日本が17-145で大敗したニュージーランド戦に2人は先発している。以降、屈辱の歴史からはい上がろうと、そろって何度もW杯という大舞台に挑戦した。広瀬監督がSO、元木GMがCTB。常に隣にいた。特別な関係と言ってもいいだろう。

「京産のラグビー部が好きなんです。もう10年もいるから愛着もある。僕は中途半端が嫌いで、とことんやり切らないと済まないですし、異常なまでの負けず嫌い。広瀬を支えながら、目標を必ずかなえたい」

13年にバックスコーチとして京産大に招かれた。昨季、23年ぶりに関西リーグを制するまでは長らく優勝からも遠ざかっていた。いいことばかりではなかっただろう。なぜこんなにも長い間、強化に情熱を注いできたのか。

「どんな事があっても自分に与えられたポジションで全力を尽くしていたら、後から振り返ると『あの時頑張って良かったな』と思えることが多いです。京産に来てから思うのは、選手を見ていても、腐らずにやっている部員はどこかでチャンスをつかむ。1年の時に『レギュラーは厳しいやろうな』と思う選手でも、コツコツやってリーグワンの門をたたくまでになる選手もいました。人が見ていないところで努力をしている選手は、いつかトップになるんです」

ラグビーファンなら「元木」と聞けば、90年代前半の強い明治や神戸製鋼時代を思い出す。明大の4年間で大学選手権で優勝を逃したのは3年生の1度だけ。1年生だった1990年度は準決勝で京産大を破り、決勝で早大に16-13で勝って頂点に立った。3連覇がかかった3年時に準決勝で法政大に敗れると、最終学年の時の結束力は記憶に残っているという。

「1年間は打倒法政を掲げてむちゃくちゃ練習をしました。ハードやった。試合に出ている、出ていないにかかわらず、1年から4年までが本気になっていた。出ていない選手はサポートに徹してくれて、決勝の朝のことはよく覚えています。寮を出る時に、玄関がきれいに掃除されていたんです。靴もそろえられていた。試合に出ていない4年生が、『気持ちよく国立に送り出そう』と、朝から掃除をしてくれていたんです。あの時のことは忘れられない」

チームの心は1つになっていた。迎えた決勝戦、明大は41-12で法大に完勝。日本一を奪い返したのである。

「目指すところは、置かれている立場で全員がベストを尽くすこと。それが、自分たちのチームに対する思いになる。人間ですから、完璧ではないこともある。でも、理想があって、それを追い求めて選手もスタッフも努力を続けていくことが大事なんじゃないですかね」

30年近く前と、現在の京産大を重ね合わせる。間違いなく頂点に近づきつつある。自信は芽生えている。

「関西連覇は難しい。パッと1回勝つことはあったとしても、2回勝つのは本当に力がないとできないこと。もう1回(大学選手権で)ベスト4に来てくれたのも、選手たちが良くやってくれたからです。主力がケガをして、チームにとって痛手はあったけど、マイナスをプラスに変える力も出てきた。(昨季の主力だったWTB)船曳がケガをして、西(2年生WTB=熊本西)が頑張ってレギュラーをつかんだ。小野(2年生CTB=京都工学院)もそう。渡辺(4年生プロップ=甲南)もケガをして、川口(2年生プロップ=東海大大阪仰星)が頑張った。そういう選手たちが大きく伸びてくれた。主力がケガをしたことはマイナスやけど、プラスもある。腐らずにやり続け、巡ってきたチャンスをつかむ。それが京産のいいところでもある」

何度も繰り返した言葉がある。

「広瀬を日本一に」-

「こいつらを勝たせてやりたい」-

インタビューの最後には、心からこう語った。

「選手が本気で1年前のベスト4から、さらに上に行こうとしている。この京産を何とかしたい。勝ちたい。日本一にしたい。まずは早稲田に対して、80分間スキをなく戦う。そのためにベストの体調と精神力で選手を送り出そうと思っています。国立で、歴史に残る試合をさせてやりたい」

10年前にまいた種は太い幹となり、広瀬監督と力を合わせ、今まさに花を咲かせる時を待つ。

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