トライに絡む微妙な判定には「TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)」が導入されたが、他の競技に比べてレフェリーの判定に特徴があるとされるのがラグビー。レフェリー関連の質問も多く寄せられた。「教えて、沢木さん!」第4弾は「レフェリー分析って何をやっているの?」。レフェリングに対しても厳しい目を持つ知将・沢木敬介氏が、分かりやすく解説した。

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レフェリーの特徴は、徹底的に調べる。どういう反則に対して、どういう考えなのか。それが、ペナルティーの数に表れる。どれだけ笛を吹き、流しているのか。笛は攻撃側に多いか、守備側に多いか。傾向は、数字を見れば分かる。それがレフェリーの分析。

スクラムやラインアウトなどセットピースはもちろん、ブレークダウン周りの傾向も調べます。厳しい点、甘い点など調べ、それをもとに練習する。(15年ワールドカップ)南ア戦のレフェリーはノットロールアウェー(タックル後にその場から離れない反則)を厳しくとる傾向だったので、タックル後すぐ離れることを徹底した。

レフェリーの立ち位置も見る。ラインアウトやスクラムの時、どこに立つか。サインプレーのじゃまになることが分かっていれば、ここに立たないでほしいと事前に言ったりもする。

ラグビーの見え方には、人それぞれという部分が絶対にある。国によっても大きく違う。大リーグのストライクゾーンがアウトコースに広いように、フランスリーグとスーパーラグビーでは判定が変わる。

例えば、ワールドカップ(W杯)レフェリー12人に名を連ねるフランスのポイトさんは、スクラムの優劣を前半の最初に見極める。それが、試合を通して判定に影響する。前半でアドバンテージを決める。それが、フランスの文化。そういうことを知っているかどうかで、全然違う。

レフェリーが決まった時に「この人か」と思うこともある。前回(W杯)のスコットランド戦は、日本と相性が悪かった。ラインオフサイドをとらない。神経質にとってくれる人もいるが、流す人もいる。ここをとってくれないのは、日本にとって厳しかった。

判定に一貫性を持たせるための副審だが、従わないレフェリーもいる。副審が「オフサイド」でも、自分の判断で流す。その判断がいい時もあれば、悪い時もある。それを含めてレフェリーは評価されている。検証システムは世界中にあって、処分によって大会から外される場合もある。

残念ながら、日本には世界と同じような評価組織がない。5月にW杯レフェリー12人が決まったが、日本人はいなかった。ホームだし、今回はチャンスがあると思っていたが。協会がプロのレフェリーを雇い、処分を含む評価を下す組織をつくらないと、日本人レフェリーのレベルは上がっていかないと思う。