今週はトップリーグ(TL)で指揮を執る海外出身の名将が、独自の目線で日本代表、ワールドカップ(W杯)について語ります。第1回は世界最高峰リーグ「スーパーラグビー」で5度の優勝経験を持つ、パナソニックのロビー・ディーンズ監督(59)です。オーストラリア代表を率いて11年W杯に出場した経験を踏まえ、「自分なら」と先発15人をセレクト。ベテランSH田中史朗(34=キヤノン)の起用法を、日本躍進の鍵に挙げました。

日本代表について語ったパナソニックのディーンズ監督
日本代表について語ったパナソニックのディーンズ監督

日本ラグビーを熟知する名将は、15年大会以降の日本代表について「選手層も含め、深みがこれまでとは違う」と進化を認めた。日本での指導は6年目。TLでしのぎを削るライバルチームにも幅を広げ、注目選手を聞いた。「海外のクラブでコーチをすることになっても連れていきたい選手」として名前を挙げたのがフランカー姫野、WTB福岡、FB松島の3人だ。

ディーンズ氏 まずは姫野。彼のプレーには魂がある。だから彼がプレーすれば周りの選手がついてくる。どんな試合でも、問題点を探すのではなく、解決策を探しながらプレーしている。心と体の強さも備わっており、間違いなく世界レベルの選手と言えるだろう。福岡はチームが機能し、チャンスさえ与えれば必ず得点に変えてくれる。日本の大きなチャレンジの1つが、チャンスをどう得点に変えるか。それができるのが福岡だ。松島は彼自身の頭の中でラグビーが明確になった印象を受ける。以前は1人の才能ある選手だったが、経験を重ね、声とプレーで周りの選手を動かせる本物のFBになった。

もし自身が日本代表監督なら、どんなメンバーで開幕ロシア戦に臨むのか-。代表候補選手のリストをにらみ、「難しいね」と苦闘しつつも、15人の名前を並べてくれた。

ディーンズ監督が選ぶ15人
ディーンズ監督が選ぶ15人

ディーンズ氏 1、2番はチームの柱となる稲垣、堀江。彼ら2人はキャリアの中でも最も良い時期に来ていると思う。3番は具。スクラムが注目されるが、彼はフィールドプレーでも自分からすすんで体を張れる。ロックにはトンプソンを入れたい。経験があるし、彼のような正確で堅実なプレーができる選手はW杯では貴重だ。難しいのはCTB。いろんな組み合わせが考えられるが、私なら、正しいプレーを徹底して遂行できる立川を入れる。

ディーンズ氏は、途中出場する選手の重要性も強調した。ポイントに挙げたのが、代表69キャップを誇るSH田中の存在だ。

ディーンズ氏 (苦戦した)昨秋のロシア戦でも分かったように、W杯に簡単な試合は1つもない。だからこそ、コーチは経験のある選手を後半から使いたいもの。フミは試合のテンポをどこで上げ、どこで落とすかを熟知している。難しい局面でピッチに入っても、チームの柱としてゲームを正しい方向にコーディネートしてくれるだろう。

左からFB松島、WTB福岡、FL姫野
左からFB松島、WTB福岡、FL姫野

日本が目標と掲げる史上初のベスト8。世界が日本の実力を認めているからこそ、難しさもあると語る。

ディーンズ氏 16年から、日本の多くの選手がスーパーラグビーでの戦いを経験した。そのプラス面は計り知れないが、それはもろ刃の剣であることも忘れてはいけない。前回大会で南アフリカに勝利した事実、そしてSRで世界のラグビーの目にさらされた事実。「やってみたら強かった」というサプライズはもうない。対戦相手も日本の強みであるテンポのあるラグビーを徹底的に分析し、彼らのベストチームで臨んでくるだろう。日本はアイルランド、スコットランドという強豪とも、十分に戦えるだけの力はある。勝利するためには、どこで、どのようにリスクを取りにいくかだ。W杯は自分たちを試す究極の場。明日はない。生きるか死ぬかがその場で決まる。そういう舞台だ。【奥山将志】