<日本陸連女子部統括 大阪成蹊大陸上部監督 瀧谷賢司(59))>

 日本陸連は、昨年9月30日に強化委員会の中に、女子部を新設しました。私は12年ロンドン五輪後から女子短距離部長を務めていますが、新しく女子部統括に就任しました。これは日本陸連の新しい試みです。

 トラックとフィールド種目は、世界と戦える男子、アジアで戦うことを目指す女子とレベルの差があります。女子部は、15人程度の少数精鋭を継続して強化し、短期的にはリオ五輪で戦う選手の強化、長期的には2020年東京五輪でファイナリストを1人出すことが目標です。

 目標実現に向けて、女子部はテーラーメード型(特別仕立て)の強化で、個々の選手のサポートを行います。これまで女子は「男子のおまけ」というムードがありました。女子部では、この従来の形から脱却して、選手が望む海外遠征、合宿などの細かいサポートを行います。現時点では世界に近い種目に絞って強化していきます。

 目的の1つには選手の意識改革もあります。これまでは他種目の女子選手同士が顔を合わせるのは、大会だけという状態でした。女子部はブロックの垣根を越えて活動します。昨年8月の世界選手権北京大会に、個人種目で出場したのは短距離福島千里、やり投げ海老原有希の2人だけでした。この2人は「世界の舞台で勝負する」という意識を持っています。その一方で「世界大会に出れば満足」という選手が多いことも事実です。2人の目的意識を、他の女子選手も持つ必要があります。交流を持つことで、より高い目標をもってほしい。そしてその意識が全体に波及していくことを望んでいます。

 女子は、マラソンが92年バルセロナ五輪から04年アテネ五輪まで4大会連続でメダルを獲得しました。しかしトラックとフィールド部門では厳しい戦いが続いています。中長距離、マラソンを除けば、1964年東京五輪から現在まで五輪入賞者はわずか2人。64年東京の依田郁子(80メートル障害5位)と92年バルセロナの佐藤恵(走り高跳び7位)だけです。4年後の「東京五輪でファイナリスト1人」という大きな目標を実現させるために、まずアジアで戦えるように国際競争力を高めて、着実にステップアップしていく必要があります。 

(2016年2月24日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。