<東京都体育場会会長 アーチェリー五輪メダリスト 山本博(53=日体大教)>

 14年4月から東京都体育協会の会長を務めています。就任当初から私は、20年大会を東京都の子どもと高齢者がスポーツを習慣にするきっかけにしたいと考えています。そのためには五輪会場の建設だけではなく、都民が日常的に楽しむスポーツ施設の充実が不可欠です。予算の使い方などを少し考えれば実現できるはずです。

 高齢者のスポーツへの意識が高まれば、健康寿命が伸びるというデータの裏付けがあります。都内の介護施設には限りがありますから、年をとっても1人で動き回れることが重要です。50~60代に運動習慣をつけておくことが一番の対策。スポーツ施設の整備は、充実した老後の力になるはずです。

 子どもに運動習慣を根付かせることも大事です。中高年から運動を始めても、なかなか続かない。でも子どもの頃から習慣があれば、自発的にできます。行政も中高年の運動指導や啓発活動にお金をかけなくてすむ。一方で子どもにはスポーツが将来、健康的で豊かな人生を育む糧になるという教育をしていくことも必要でしょう。

 今、一番考えているのは20年の後です。大会後は熱が冷め、20年を頂点にした「崖」ができます。それは仕方がない。でもこの崖を緩やかにすることはできます。まず東京都体育協会に所属する111の加盟団体の会員を増やす。20年大会のボランティアなどのスポーツに関心のある人に興味のある団体を紹介する。スポーツを愛好する人が増えると、崖はきっと緩やかになります。

 84年から五輪5大会に出場して、84年に銅、04年に銀メダルを獲得しました。一番印象に残っているのは84年ロス大会です。市民ボランティアが意欲的に活動する姿にスポーツ文化への理解度の高さを感じました。20年大会が決定して東京もスポーツ文化への理解が深まっています。この流れを恒久的なものにして、あくまで20年は成長過程という機運をつくりたい。施設、予算、人口などで突出する東京の意識レベルを上げれば、全国に裾野が広がっていく。そんな自負を持って取り組んでいます。

(2016年6月22日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。