私は14年1月4日に来日しました。目標は20年東京五輪でフェンシング日本代表チームに初の金メダルをもたらすこと。本大会まで6年半、長期計画で地道に強化していけば、メダルは必ず取れると確信していました。

 フェンシングは3種目あり、私はサーブルのコーチです。韓国代表監督として12年ロンドン五輪で男子団体、女子個人で金メダルを取りました。韓国選手にできたことが、日本選手にできないわけがありません。 来日当時、日本のサーブルチームの世界ランキングは高くなかった。女子が24位、男子は22位。五輪の団体戦は上位8カ国に出場資格があり、開催国でも条件を満たさないと出場できない。3年半前、初対面した日本代表選手に夢を聞きました。ほとんどの選手が「五輪出場です」と答えました。

 目を輝かせる選手たちに「私の夢はみんなに金メダルを取らせることです」と伝えました。そのためには世界ランク上位の選手たちにもまれないといけない。世界大会前にフランスやイタリア、ロシアなどの強国に遠征し、上位選手と練習させました。さらにプライベートでも親交を深めるように指示しました。世界トップ選手は雲の上の存在ではなく、同じアスリートだと、認識させることも必要と感じたからです。

 最初はちゅうちょした選手たちも、次第に彼らと一緒に食事をしたり、冗談を言えるようになりました。今では国際大会前に「日本の○○クスリを買ってきて」などのメールを受けることもあります。国際審判にも笑顔であいさつできるようになり、ようやく世界で戦えるスタートラインに立てたと感じています。

 今年から女子サーブルチームの指導に専念しています。今年の目標は団体戦の世界ランク7位、個人戦で2人が16強に入ることでしたが、4月の世界選手権(ライプチヒ)で団体戦4位、個人戦では3人が8強に進出して入賞しました。しかも世界ランク1、2、3位を16強、32強で倒して。8月のユニバーシアード台北大会では団体戦で初の金メダルも獲得しました。

 東京五輪金メダル。夢を夢で終わらせないため、私は私の愛する選手たちとともに、努力を惜しまないことを誓っています。フェンシングがメジャーになる日を夢見て…。



(2017年10月18日東京本社版掲載)