東京オリンピック(五輪)開幕が1カ月後に迫り、自分のことのように気持ちが高ぶっています。柔道男子100キロ超級代表の原沢久喜(28=百五銀行)の弟の侑高です。兄貴の自称「一番のファン」かもしれません。出場する国際大会は欠かさずチェックして家族に結果を伝え、いまだにYouTubeで16年リオデジャネイロ五輪決勝の試合を見ています。

兄貴の背中を追って、地元の山口県下関市で4歳から柔道を始めました。中学は野球部でしたが、高校まで続けました。階級は90キロ級で県大会4強レベル。入部した時は「俳優になる前に柔道でも開花させるか」と自信満々でしたが、挫折しました…。中学生の頃から将来は「俳優」と決めていて、耳をつぶしたくなかったので寝技になると逃げていました。ギョーザ耳で俳優はできないですし、弱小だったので奇跡的にそれが許されました。当時の目標は上京でもあったので、部活後の焼き肉店でのバイトに明け暮れました。3年間で100万円を貯金して、猛反対していた母ちゃんに「俺の東京へ行く覚悟だ」と現金を見せて何とか説得しました。

自分とは正反対の性格で、柔道一直線の寡黙な兄貴を尊敬しています。夜中に起きてトレーニングに向かう姿を何度も見てきました。決して弱音を吐かず、愚痴もこぼさない。ストイックで努力を重ねてきた人です。国際大会に出場する時、なぜか空港までの送迎を頼まれるんです。会う度に肉体改造中の兄貴の体が引き締まってでかくなっていて、その度に着られなくなった服をくれます。今着てる白シャツ(XXL)もお下がりです。強くなるために早鞆(はやとも)高時代に食べて体をでかくしていましたが、食は細いので柔道を続けていなければ自分と同じ体形だったと思います。

最重量級は兄貴や五輪3連覇を狙うリネール選手だけでなく、他の海外勢も本当に強い。それは分かっていますが、弟としては負ける兄貴を見たくないというのが本音です。ゾーンに入った時は最強なので、2度目の大舞台では「最強の兄貴」になって、優勝できることを信じています。(352人目)

原沢久喜(2019年8月31日撮影)
原沢久喜(2019年8月31日撮影)