シーズンを通じて大きな成長が感じられた選手です。今季前半、フリーの「アメリ」を見たときは正直、このプログラムで五輪切符をつかめるだろうかと思いました。でも確実に試合の中でブラッシュアップしてきた。パントマイムのような手の動きも、最初はただ振り付け通りに動かしているだけに見えました。それが、何かを拾う動作だったり動かす動作は、本当にものがそこにあるように感じられるようになりました。ただ腕をぶらぶらさせるんじゃなく、力を抜きながら軽さを出すような表現が広がりました。

　けっしてドラマティックではない、不思議な少女をテーマにしたプログラム。得意分野でオリンピックに挑戦したいと思う選手が多い中、あえて挑戦の道を選んだ。だからこそ、成長が抜きんでて素晴らしいと思わせたのではないでしょうか。

　定評のあるテクニック面も安定感を増しています。ジャンプは本当に魅力的です。高さがあって着氷した後もスピードがある。ジャンプがはまれば表現にも気持ちが入るし、いい相乗効果になっています。最高の笑顔を楽しみに待ちたいなと思います。【川崎孝之】

　◆川崎孝之（かわさき・たかゆき）１９９１年（平３）１０月１日、愛知・半田市生まれ。安藤美姫さんの活躍をきっかけに、中学生からスケートファンに。１９歳で編み出した陸上フィギュアスケートの活動が注目され、テレビ出演も多数。現在は氷上でのスケート練習に励み、大人からの選手デビューを目指している。