伝説の伝道師になる。フィギュアスケート男子で66年ぶりの連覇を達成した羽生結弦(23=ANA)が18日、平昌(ピョンチャン)で一夜明け会見を行った。現役続行を表明するとともに、キャリアを終えた後は「世界を回りながら1位を目指している人を手助けしたい」と、スケート界史上最高といえる自身の技と表現を世界中に伝え歩く考えを披露した。

 「これからの人生、オリンピック(五輪)の金メダリストとしてまっとうしたいと思います」。首から下げるメダルと同じように、会見に臨んだ羽生は輝いていた。「これからももうちょっとだけ、自分の人生をスケートにかけたい」と改めて現役続行を表明した。さらに現役後の人生設計についても具体的に語った。

 羽生 世界でいろんなところを回りながら、本気で1位を目指している人に手助けをしたい。僕は幸いにも日本で最初に練習して、最終的にはカナダで練習することになり、いろんなことを学べた。何より今、フィギュアスケートの技術、演技、そういった分野で幸いにも一番上のところにきたと胸をはって言える。そういった経験をみんなに伝えるお仕事ができたらなと思います。コメンテーターでもあるのかもしれないけど、テレビというよりは、できれば直接選手の手助けがしたいと思っています。

 10代で最初の金メダルを取った後に2連覇したのは米国のディック・バトン氏と羽生の2人だけ。史上初めて4回転ループを跳ぶなど数々の前人未到の記録を残し、現在はショートプログラム(SP)、フリー、合計点すべての世界記録保持者。表現力を示す演技構成点でもほぼ満点に近い評価をもらっている。現代最高峰ともいえるまで磨いた技を、世界を回って次の世代に伝えていくつもりだ。

 ただ、夢をかなえるまではやめない。まだ誰も試合で成功したことのないクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)だけがモチベーションだと語った。アクセルは、唯一前向きに跳ぶジャンプで羽生が最も得意とする技。「僕の恩師である都築先生に言われた言葉が『アクセルは王様のジャンプ』」。痛みの残る右足首をしっかりと治し、その後で、王者のジャンプの習得に取りかかる。【高場泉穂】

 ◆羽生の金VTR 右足首痛の影響で4カ月ぶりの復帰戦ながら、16日のショートプログラム(SP)でほぼ完璧な内容を披露。自身が持つ世界最高得点に1・04点と迫る111・68点で首位発進。17日のフリーでは右足首の痛みをこらえながらほとんどのジャンプを決め、206・17点、合計317・85点で、五輪連覇を飾った。