仙台市出身の羽生結弦(23=ANA)の平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)・男子フィギュアスケート金メダル獲得から一夜明けた18日、仙台市内の「羽生ゆかりの地」には、興奮冷めやらぬファンが足を運んだ。宮城県内だけでなく、国内外から足を運び、感動を継続。羽生の勇姿を思い浮かべ「ユヅくん、ありがとう」と、涙を流す女性の姿もあった。
“聖地”巡りで、ファンは感動と喜びを分かち合っていた。羽生が幼少期から練習拠点としていたアイスリンク仙台は一般開放され、家族連れを中心に滑りでユヅ気分に浸った。壁一面に張られた羽生への応援メッセージの前にも、人だかり。写真やパネルが掲示されている記念コーナーでは「僕も羽生くんみたいになる」と回転してみせる男児の姿もあった。
14年ソチ五輪での優勝を記念し設置された国際センター駅の記念碑前には、写真撮影するファンが続出。前日17日には仙台市体育館でパブリックビューイング観戦した栃木県在住の金居明美さん(47)は「今回はチケットがとれなくて平昌に行けなかったですが『最高に幸せ』という言葉を聞けて涙が止まりませんでした。今日は“羽生くん参り”です。ユヅくんありがとうって」。新聞やニュースを見ても涙があふれた。姉の松本操さん(52)とアイスリンク仙台にも足を運び「ここで、きのこみたいな髪形で滑っていたんだなと思うと、ジーンときました」と目を赤くした。大阪府在住の赤沢真さん(34)吉川佳那さん(27)のカップルもポーズをとった。
日本のフィギュアスケート発祥の地とされる仙台城近くの五色沼では観光客も思いをはせた。台湾から来た楊麗絲さん(59)は「台湾は冬の五輪はなかなか出場選手がいないが、日本の皆さんおめでとうございます」と頭を下げ、娘の陳郁薫さん(27)も「すてきでした」と笑みを浮かべた。
ソチ五輪後に羽生自身がお礼参りし、勝負の神として有名になった秋保(あきう)神社も参拝客が相次いだ。東松島市の佐藤康男さん(83)は「これから秋保温泉。羽生くんのおかげで、良いお酒が飲める」。日の丸をデザインし、羽生を記念して作られた「新勝守」や日本酒、孫の受験に備えて合格祈願の凧(たこ)なども購入していた。
2年前から始まったファンによる必勝祈願のぼり旗奉納は昨年からの1年間で約300本。旗の文字を書き続け、神職を務める菅原望さん(33)は「無事に終えてほしい気持ちで、怖くて見られなかった」。連覇達成には「ファンと神様の縁がつながることができて本当に良かった」と安堵(あんど)の表情だった。今後は祝賀パレードなどを望む声も多数あがっており、歓喜の余韻はまだまだ続きそうだ。【鎌田直秀】