ショートプログラム(SP)4位の宮原知子(19=関大)がフリーで146・44点を記録し、自己ベストを4・05点上回る合計222・38点で4位に入った。演技終了時点はトップだったが、ともに「ロシアからの五輪選手(OAR)」で金メダルのザギトワと銀メダルのメドベージェワが高レベルの演技。銅メダルのオズモンド(カナダ)にも合計で8・64点及ばなかった。6位坂本花織(17=シスメックス)とともに22年北京五輪につなげる。

 上位3人が待機するグリーンルームで、宮原はオズモンドの舞をじっと見つめた。約30分前、人生一のガッツポーズで生まれた「ここまで来たらメダルが欲しい」という願いは、悔しさに変わった。「やっぱり勝つにはもう1歩だな。悔しいけれど、もっと頑張るしかない」。後を滑ったライバルたちの好演技を素直に受け入れ、賛辞を贈った。

 ルッツ-トーループの連続3回転ジャンプで加点を導き、課題の回転不足を克服した。3つのスピンとステップは全て最高評価のレベル4。「自分のベストな滑り」と技術点を全体4位に伸ばし、ジャンプにミスがあった3位オズモンドとは1・30点の僅差だった。

 明暗を分けたのは演技構成点。表現やスケーティングなどが対象の同構成点では、オズモンドに4・41点劣る5位。課題の1つに「プログラム自体の勢い」を挙げ、メダリストとの間にある差を自己分析した。

 昨年1月には左股関節の疲労骨折が判明。春に1カ月間氷上を離れると、夏には左足捻挫、さらに右股関節骨挫傷に見舞われ「滑ったら折れる」と医師に告げられた。ジャンプを交えた通し練習は10月にまでずれ込み、11月下旬になって北米で振り付けの手直しを実施。だが、プログラムを滑り込む時間が減ったことを1度も言い訳しなかった。

 「今日の自分の演技で少しだけ『ありがとうございます』の気持ちを伝えられたかなと思います」

 故障の一因は長年の栄養不足で、目標体重を4キロ増に設定。当初は「サウナで汗をかいたら、体重が減っていて『よっしゃ』と思った」と管理栄養士に体重を報告し、担当者は「いやいや、逆だから」と苦笑いした。価値観を180度変え、支え、支えられて見た景色が新しい目標をくれた。

 「今度こそ、メダルを取りたいという気持ちが強くなりました」。その裏で浜田コーチは「作戦はもう立てているので。秘策があるので頑張る」と笑った。4年後の北京へ、宮原のスケートはさらに進化を遂げる。【松本航】