日本のエース、渡部暁斗(29=北野建設)が、銀メダルを手にし、2大会連続でメダルを獲得した。前半ジャンプ(ヒルサイズ=HS109メートル)で105・5メートルを飛び3位につけた。後半距離(10キロ)では、残り約1キロを残し、14年ソチ五輪金メダルのフレンツェル(ドイツ)との一騎打ちとなった。しかし、フレンツェルが坂でスパート。渡部はついて行けなかった。

 大会前から金メダルを宣言していただけに、2大会連続での銀でも「メダルを取れてほっとしているというのが半分と、本当にあとちょっと、自分がめざしているところにたどり着かなかったという悔しさが半分という感じ」と話した。相手のスパートについて行けなかったのは「彼の方がスピードがあった。その辺が、今日は完敗」と、素直に負けを認めた。

 メダル取りのために、地味な努力を重ねた。「金メダルを取る確率を高めるためには秘策をもって1発にかけるのはいい作戦ではない。器を大きくするように仕上げたい」と話してきたように、日々を積み上げた先にメダルが待っていた。

 昨季、後半から改善したジャンプもそう。すぐには変われない。飛び出しの部分の改善に取り組んだが、夏の間、1つ1つ集中して試して、それを繰り返し行うことで組み合わさって好調の今季につなげた。ビデオで見ても「自分でも分からないくらい。でも、飛行曲線が違うかな。それによって着地もしやすい」。

 今季のW杯開幕戦でジャンプでリードし、そのまま逃げ切りいきなり勝利。五輪の直近5戦で4勝と個人総合トップに立つ。積み上げたものが強固な土台となり、抜群の安定感を生んだ。

 求めているのは、「強い選手が勝つ」W杯総合王者だが、五輪の金メダルもその通過点にある。「金メダルを取る」。有言実行は、ノーマルヒルではならなかったが、まだラージヒルと団体が残る。