メダルは4年後にお預けとなった。高校1年生の岩渕麗楽(16=キララクエストク)は147・50点で4位。10点差でメダルには届かなかったが、日本人最高位と健闘した。1回目に2回転半の「キャブ900」で79・75点をマーク。2、3回目は縦2回転、横3回転の大技「バックサイドダブルコーク1080(DC10)」に挑むも、着地が乱れた。藤森由香(31=アルビレックス新潟)は7位、鬼塚雅(19=星野リゾート)は8位に終わった。
左胸を2度たたき、最終3本目のスタートを切った。それは緊張した時、岩渕が自らを鼓舞する儀式。大空にテークオフし、世界トップクラスの大技DC10に挑戦した。決まればメダルに大きく近づいたが、着地で尻をついた。身長149センチで、21世紀生まれのライダーは「あと1歩届かないのが今の自分の実力なんだな。大事なところで決めきれないのも弱いところ」と受け止めた。
日本勢女子最年少メダルを逃した。それでも16歳70日での入賞は、個人種目では女子最年少。レース後母恵里香さん(44)から「頑張った」と、ねぎらわれると「立てなかった」と我慢していた涙が止まらなかった。ワールドカップ(W杯)初参戦となった昨年9月の大会では、英語が分からず、スタートのタイミングを間違え、1本を無駄にした。そんな少女がオリンピック(五輪)で躍動した。
成果を見せたかった。昨年5月。DC10を習得するためだけに米カリフォルニア州の雪山に3週間こもった。未知の技への恐怖で、最初の2日間は1度もチャレンジすらできなかった。3日目に、西田コーチから「それをやりに来ているんだからやるぞ」と一喝されると、足が震える中いきなり成功させ周囲を驚かせた。その後は転倒しても「ここでやめたら怖くなる。もう1本行く」と心の弱さは消えた。成長速度は加速、一気に日本、世界のトップライダーとなった。
西田コーチは「空中でぶれない。バランスがいい」と強さの理由を明かした。岩手・東山中では器械体操部。本人は「バスケ部に入りたかった」と笑うが、両親の説得に折れ、入った部活で空中感覚が磨かれた。保育園の卒園式では「五輪に出たい」とスピーチした。でも今は、出場だけで満足できない。「この舞台に挑戦するには回転数も上げて、技術面でもレベルアップしないといけない」。それは20歳で迎える北京五輪への宿題だった。【上田悠太】