オリンピック(五輪)初出場の郷亜里砂(30=イヨテツク)は、37秒67で8位入賞した。同走は五輪2連覇中の李相花(韓国)。100メートルでリードされると焦りが生まれ、目指した伸びやかなスケーティングができなかった。「力は全部この舞台で出し切れたのかなという思いと、これがオリンピックなんだなという気持ち。タイムを見て悔しさしかなかった」と涙が止まらなかった。

 高校まで全国大会での実績はなくほぼ無名だった。引退を考えたのは高校、大学卒業時、さらに前回五輪を逃した時と3度もあった。社会人になってから所属先は3度変わった。決して平たんではなかったが、五輪後に発足したナショナルチーム入りし、力をつけメダル候補にまでなった。

 山梨学院時代の恩師、川上隆史監督の「諦めなければ絶対いいことがある」の言葉を信じ、ぶれず歩いたスケート人生。今後について「まだ何も考えられない」。遅咲きの美人スケーターの初舞台が、静かに幕を下ろした。