22年北京五輪のエース候補だ! 五輪初出場の佐藤綾乃(21=高崎健康福祉大)がオランダとの決勝で起用され、冬季五輪日本女子最年少金メダリストに輝いた。W杯(ワールドカップ)デビューとなった昨季は世界の壁を痛感したが、ナショナルチームで高木姉妹らの背中を追い、急成長。3000メートル8位入賞に続いての大仕事を果たした。

 魂の1周半だった。佐藤は高木美が1・75周を先頭で引っ張った後、準決勝も滑った高木菜の負担を軽減させるため、初めて本番で1周半を任された。「自分は滑れるのか」と不安は募ったが、迷いを吹っ切りスタートに立った。ラスト1周で転倒しそうになっても、後ろの高木菜が支えてくれた。死に物狂いで足を動かし、3人でゴールに飛び込んだ。

 21歳73日での金メダルは、21歳244日で98年長野五輪を制したフリースタイル女子モーグルの里谷多英を超える、冬季五輪の日本女子最年少記録。満面の笑みを浮かべて表彰台に立つと「すごくうれしい。転びそうになって悔しい思いもあるが、一緒に戦ってくれた先輩たちに感謝したい」と充実感をにじませた。

 父との二人三脚が強さの原点だった。北海道・厚岸町生まれ。幼少期は漁師でスケート好きの父文則さん(49)とともにあった。父の実力は「町内会レベル」だったが、指導は厳しかった。毎日、反省点を指摘され、風邪をひいても「気のせいだ」。イカ、毛ガニ、ツブ貝、昆布が専門の父の仕事を手伝うのも日課。イカが入った20キロの箱を、1日100箱も船から運び降ろした。それが実り、中3で全国大会1500、3000メートルで2冠。高校でも総体で両種目を制した。故郷で父と築き上げた心と体を土台に素質を開花させた。

 今季はナショナルチームの活動時間を優先するため、大学にも配慮してもらった。「保育士」の夢も1度封印。すべてを五輪にぶつける覚悟を持って滑りを磨き上げた。

 中1から指導を受ける日本代表の白幡圭史コーチ(44)からは、高木美の動きを目で追うように言われ「次はお前だぞ」と背中を押されてきた。初の五輪にも、明るいムードメーカーらしく、最後まで攻めの滑りを展開。24日は今季W杯で初優勝したマススタートが控える。次代を担う元気娘は、大舞台でその輝きを増していく。【奥山将志】

 ◆佐藤綾乃(さとう・あやの)1996年(平8)12月10日、北海道厚岸町出身。釧路北陽高から高崎健康福祉大。現在3年で人間発達学部子ども教育学科。16年世界ジュニアのマススタート優勝。昨年11月のW杯ヘーレンフェイン大会も優勝。今大会3000メートル8位入賞。父は漁師も生魚は食べられない。157センチ、56キロ。