停滞ムードの日本を熱い走りで盛り上げる。東京オリンピック(五輪)マラソン代表枠を争う東京マラソン(来月1日号砲)の会見が28日、都内で行われた。

日本記録を持つ大迫傑(28=ナイキ)、前日本記録保持者の設楽悠太(28=ホンダ)、2時間6分54秒の自己記録を持つ井上大仁(27=MHPS)ら有力候補が出席。新型コロナウイルスの影響で一般ランナー抜きとなったが、感染拡大は広がり、スポーツイベントは軒並み中止。この日は北海道が外出禁止の緊急事態宣言を出した。非常事態が続く中、3人は五輪切符争いの熱戦を誓った。

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新型コロナウイルスの猛威に、北海道は緊急事態宣言を出した。あの東京ディズニーランドもユニバーサル・スタジオ・ジャパンも休園。停滞ムードが日本を包む中で、残り1枚の五輪の切符を巡り、ランナーたちが大都会を駆け抜ける。一般の部はなくなり、規模縮小も、注目のレースを走れる喜び、使命を胸に刻む。有力五輪代表候補の3人は次々に力強いメッセージを述べた。

大迫 僕らが熱い走りをすることで、元気を与えられると思う。

設楽悠 自分にとって、マラソンとは沿道の応援に限らず、すれ違う一般ランナーの姿も力になっている。今回は参加できない一般ランナーの選手のためにも、全力で頑張りたい。

井上 世間が大変な中、大会に出場させてもらえるのは貴重なこと。出られなかった人たちにも顔向けできるような走りをしたい。

レースが一番盛り上がる展開。それは残り1枠となった東京五輪の代表権の最低条件となる2時間5分50秒の日本記録を上回るタイムを残すことだ。

大迫はマラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)3位で、東京五輪の代表内定を逃した。それを糧にケニアで2カ月半の合宿を積んできた。目標タイムこそ「?」とし、具体的に設定しなかったが、「2位ならば内定していた。悔しくないというのはうそになる。悔しさがあって次に進んでいる。悔しさをプラスに捉えている。練習の感じを見ても(日本記録更新は)不可能ではない」。過去を回想しない男が、珍しくMGCを「悔しい」と繰り返した。そこに並々ならぬ決意が漂った。

設楽悠は「2時間6分10秒」と自己ベストを目標に掲げた。「自然に走れば、記録は付いてくる。最低でも、このタイムを超えられるように走りたい」。2年前の会見では「2時間9分台」を目標とし、出したタイムは当時の日本記録。東京五輪に固執しない姿が、逆に不気味だった。

井上は日本記録を1分20秒も上回る「2時間4分30秒」と強気の設定をした。「世界で戦う基準として、頭に入れておくべきタイム」。MGCでは完走者中では最下位となる27位からの起死回生の快走を誓った。

今大会には自己ベストが2時間2分48秒のビルハヌ・レゲセ(エチオピア)ら強力な海外勢も出場する。停滞が続く男子マラソン。世界との差が埋まった姿を示すことも、明るい話題となる。【上田悠太】