日本陸連は19日、都内で理事会を開き、東京オリンピック(五輪)で金メダルを目指す男子400メートルリレーの戦略案を承認した。条件付きで100メートルと200メートルの個人2種目出場を認めた。

条件は両種目で「少なくとも決勝進出の可能性を示す記録水準に到達すること」。明確な記録水準はないが、目安は強化競技者のシルバー相当という。シルバーの水準は100メートルが9秒93、200メートルが19秒98となる。

他にも日本選手権の2冠、リレーの強い出場意欲、強化合宿や指定レースへの出場も条件に含まれる。

すでに日本陸連側は強化選手の指導者とも話し合い、合意を得られたという。麻場強化委員長は「男子400メートルリレーは特別な位置付け。現場の反対はなかった。引き続き、話し合いながら進めていく」と話した。

昨年12月の理事会で提案された選考要項案には、個人種目の出場は「原則1種目」と記されていたが、その文言は「選考要項」から外された。今回は戦略案として、個人2種目出場の条件が示された。

その上で個人種目は1種目に絞るように働き掛けていく。その提案の背景には、過去の世界大会における日本勢の個人2種目は、リレーの大きな懸念材料だったことがある。15年世界選手権は高瀬が、17年世界選手権はサニブラウンが2種目に出場。しかし、世界大会の反動は大きく、リレーは欠場を強いられた。昨秋の世界選手権でも、100メートル自己記録9秒98の小池が両種目に出場も、400メートルリレー予選時は本調子には遠く、決勝は多田への交代を余儀なくされていた。事実上、個人2種目出場はリレーを“捨てる”ことになっていた。

そして世界選手権以上に、東京五輪は日程が極めて過酷になっている。

8月1日 男子100メートル予選

8月2日 男子100メートル準決勝、決勝

8月4日 男子200メートル予選、準決勝

8月5日 男子200メートル決勝

8月6日 男子400メートルリレー予選

8月7日 男子400メートルリレー決勝

昨秋の世界選手権は男子100メートル、200メートル、400メートルリレーの3種目を9日間で消化したが、東京五輪は7日だけ。会場となる国立競技場のタータン(走路)は反発が強い。また地元開催の五輪となれば、精神的な負担も経験のないものになる。

日本は男子400メートルリレーで金メダルが期待されているが、各国のレベルアップは著しく、メダルが安泰といえないのも事実。昨秋の世界選手権男子400メートルリレー決勝で、日本は37秒43のアジア新記録を樹立するも、結果は銅メダルだった。個人種目の過剰な負担により、ベスト布陣で挑めなければ、東京五輪でメダルにすら、表彰台にも手が届かない危機感を強化陣は持っていた。悲願の金メダルへの能力を最大限に発揮できるようにした形だ。【上田悠太】