女性蔑視発言で辞任した東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長(83)の後任人事を巡り、選定が混迷を極めた新会長に18日、橋本聖子五輪相(56)が就任した。開幕まで半年を切り、開催への不安や新型コロナウイルス対策など課題は山積。夏冬7度の五輪出場を誇る申し子ながら、過去のセクハラ疑惑など悩みも逆風もある中で新たな大会の顔になった。五輪相は国務大臣規範(兼職禁止)により辞職した。

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森氏の辞任、川淵三郎氏の後継白紙など混乱の末、組織委トップに担ぎ上げられた橋本新会長は「この経緯は都民や国民の気持ちを困惑させた。信頼回復に努めていきたい」と神妙に言った。検討委員会で9人が挙がったという候補者から一本化、就任要請され、この日1回目の理事会までに菅首相や支援者らに筋を通して受諾。評議員会で理事に、2回目の理事会で会長に全会一致で選出された。

即答できずにいた。会長になれば五輪相の返上は絶対。自民党離党、参院議員辞職の可能性もあった。親族のため金銭的負担を抱える事情もある。だが「議員辞職しなくていいと政府、IOC(国際オリンピック委員会)から認められた。超党派でやってきた」。お膳立てに首を縦に振った一方、政府の言いなりになる懸念には「疑念が持たれない行動を取る。国には左右されない」と力を込めた。

14年にはフィギュアスケート男子の高橋大輔にキスを強要した、と週刊誌に報じられた。受け手の感覚次第では女性蔑視発言よりも重い直接的行為。7年前も容赦なく蒸し返され、家族に迷惑をかける。それでも逃げなかった。「身を投じた」との表現で火中に飛び込み「軽率な行動を当時も今も深く反省しております」と謝罪。「多様性や男女平等を掲げる会長職を全うすることで、ご理解いただければ。身を正していく」とし、月内に理事会の女性比率を40%にする対策を約束した。政治の師でもある森氏とは「週明けにも引き継ぎを受けたい」としつつ「正していくもの継承していくもの、区別していく」と懸命に距離をつくった。

前回東京大会の開幕月である1964年の10月に生まれ、自転車とスピードスケートで夏冬7度の五輪出場。3度の選手団団長を務めた。担当相としては組織委や都、IOCと向き合ってきた中、突然、新型コロナ対策、中止や再延期やむなしの声が、より突き刺さる立場になった。「開催は決定している」と断言し、アスリートを思った。「コロナ禍、世論の中で目指していいものか自問自答している選手が、迷うことなく夢の舞台に立てるように。社会の空気を変えていきたい」。今日19日の職員あいさつが滑りだし。開幕まで5カ月強で、スケートリンクやバンクで見せてきたような、スピード感ある決断を求められる。【木下淳】