【完全版】サラリーマンのアイコンから学んだバランス感覚/栗山英樹―弘兼憲史〈Ⅲ〉

侍ジャパン前監督の栗山英樹氏(62)が、野球界以外の人物と語り合う〝異色対談〟第2弾が実現しました。1月に「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長(74)と対談したのに続き、今回は「島耕作」シリーズで知られる漫画家の弘兼憲史氏(75)。漫画界を代表するストーリーテラーは、WBC世界一のストーリーをどう見たのでしょうか? 【シナリオ論】【漫画論】【島耕作論】の3部に編集。「完全版」でお楽しみ下さい。最終回は、島耕作というアイコンを通して交わす組織論。サラリーマンの皆さま、必読です。

プロ野球

▼【対談】栗山英樹―弘兼憲史▼

【Ⅰシナリオ論】

【Ⅱ漫画論】

【Ⅲ島耕作論】


▼【対談】栗山英樹―柳井正▼

【Ⅰ大谷翔平論】

【Ⅱリーダー論】

【Ⅲ組織論】

◆栗山英樹(くりやま・ひでき)1961年(昭36)4月26日、東京都生まれ。創価高―東京学芸大。83年ドラフト外でヤクルト入団。プロ1年目秋に両打ち転向、3年目に打率3割。89年に外野手でゴールデングラブ賞。通算494試合、336安打、7本塁打、67打点、打率2割7分9厘。90年に引退後はスポーツキャスター、大学教授などを務め、12年から日本ハム監督。12年リーグ優勝、16年日本一。通算10シーズンで1410試合684勝672敗54分け、勝率5割4厘。21年11月、日本代表監督就任。現役時は174センチ、72キロ。右投げ両打ち。

2023年5月21日、東京・六本木「六花」

2023年5月21日、東京・六本木「六花」

弘兼憲史(ひろかね・けんし)1947年(昭22)9月9日、山口県生まれ。早大法学部卒業。松下電器産業(現パナソニック)に勤務後、74年に「風薫る」で漫画家デビュー。「島耕作」シリーズや「ハロー張りネズミ」「加治隆介の議」など数々の話題作を世に出す。「人間交差点」で小学館漫画賞(84年)、「課長島耕作」で講談社漫画賞(91年)、講談社漫画賞特別賞(19年)、「黄昏流星群」で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞(00年)、日本漫画家協会賞大賞(03年)を受賞。07年には紫綬褒章を受章。人生や生き方に関するエッセーも多く手がけ「増補版 弘兼流60歳からの手ぶら人生」(中央公論新社)、「弘兼流 やめる! 生き方」(青春新書インテリジェンス)などの著書がある。

話題は弘兼氏の代表作「島耕作」を軸に、リーダー論へと移る。

「和を考え、意見を聞いて…」

栗山氏(以下、栗山)島耕作さんは、なぜ会長まで上り詰めたのか聞きたいです。先生は、人として大切なものを表現してくださったと思います。僕らは選手に何か伝えるとき、例えば漫画のように手近なところにあるものを出すと伝えやすいんです。

弘兼氏(以下、弘兼)島耕作はサラリーマンから上がってきた社長なので、みんなの和を考え、意見を聞いて、最後にトップダウンするタイプです。

最初に「俺はこうやるぞ」と掲げて、ついてこいというタイプじゃない。一般のサラリーマンに多いですね。

「島耕作」は現実に近い漫画なので、ワンマン社長みたいにはしませんでした。だから、キャラクターは強くない。その分、脇役に面白いキャラクターをそろえて、ストーリーを築き上げました。

栗山島耕作さんのイメージは(生年月日が同じ)先生ご自身なんですか?

弘兼そんなことはないです(笑い)。モデルはいるんですけど。僕は会社に3年間しかいなかったですが、出世する人のタイプを見ると、いろんな人がいました。

ただ、結局、突出してこれができるという人は、部長、課長までは上がるけど、重役から上はバランスがよくて、総合的にグーッと上がっていく人がなる。「サラリーマン金太郎」みたいな、でこぼこがある性格では、やっぱりダメかなと思って。島耕作はバランス人間になってるんですよ。

栗山会社の中は、そういうものなんですか。僕はサラリーマン経験がないので。

バランス型の島耕作は、周りとの距離の取り方が絶妙だ。部下のトラブルなどに首を突っ込むかと思えば、必要以上に立ち入らない場合も少なくない。

本文残り62% (2243文字/3632文字)

子どもの頃、平和台球場で見た情景がプロ野球観戦の原点。大学卒業後は外務省に入り、旧ユーゴスラビアのセルビアやクロアチアの大使館に勤務したが、野球と縁遠い東欧で暮らしたことで、逆に野球熱が再燃。30歳を前に退職し、2006年6月、日刊スポーツ入社。
その夏、斎藤佑樹の早実を担当。いきなり甲子園優勝に立ち会うも、筆力、取材力及ばず優勝原稿を書かせてもらえなかった。それがバネになったわけではないが、2013年楽天日本一の原稿を書けたのは幸せだった。
野球一筋に、横浜、巨人、楽天、ロッテ、西武、アマチュアの担当を歴任。現在は侍ジャパンを担当しており、3月のWBCでは米・マイアミで世界一を見届けた。
好きなプロ野球選手は山本和範(カズ山本)。