世界ジュニア銀、ナオキ・ロッシが見た母の国「日本選手は諦めない。根性強いなって」

昨季の国際大会のキスアンドクライで印象深いシーンがあった。

3月の世界ジュニア選手権(カナダ・カルガリー)のフリー。現地からの映像を見ていると、まさに大号泣という言葉がふさわしく、むせび泣く姿が目に飛び込んできた。

ナオキ・ロッシ、漢字では「直樹」と書く16歳の青年がメダルを手にした瞬間だった。スイス男子として同大会46年ぶりのメダルを手にした演技は、特にそのポジションの美しさが際立っていた。先月、直接インタビューする機会を得て、都内で合流すると、屈託ない笑顔でその時について教えてくれた。

フィギュア

記憶に残った号泣表彰台
スイスの16歳にインタビュー

合同キャンプで練習に臨むナオキ・ロッシ

合同キャンプで練習に臨むナオキ・ロッシ

SP3位もフリーに自信持てず
「こんなん、うち絶対終わるやん」

「もうフリーに進出できればそれでいいやと思ってて、『やばい24位に入らないといけない』っていう気持ちだったんですね。誰もほんと、誰もまさか僕が世界選手権で表彰台なんて、もう想像にもしなかったですよね!」

ショートプログラム(SP)で3位に入った事は自分でも驚きだったという。確かにシーズンの序盤のジュニアGPシリーズは4位と8位。ただ聞けば、これはケガの影響が大きかった。

「ちょうど去年のこの時期に腰の疲労骨折が分かって。なので、グランプリの2週間前に跳び始めて、全部ほんと戻してきましたけど、結果も災難だったんで。GPはトラウマでしたね」

その事情を詳しく知らずに、世界トップ戦線に登場したように感じていたのだが、それは周囲の友人なども同じだったという。そして、彼/彼女たちはフィギュアスケートのルールを知らなかった。本人は、フリーを終えて10位以内に入って24年ユース五輪の出場につなげようと、SP3位の結果を受け止めていたのだが…。

「だから、大変だったんです! 昔のクラスメイトとか、インスタで『3位、おめでとう!』『才能あったの知ってたよ!』とか。まだ終わってないし、フリーあるし、10位とかなっちゃったら、もうどうやって返そうって。それで悩んでて、恥ずかしいと思ってて、これ、どういう風に言えばいいのかなと思って。ほんとにフリーの前、生きた心地がしなかった!」

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スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。