出場枠が照らす“りくりゅう”の覚悟 ミラノ五輪でともに喜びを分かち合うために
世界選手権のペアで銀メダルを手にし、3年連続表彰台に上った「りくりゅう」こと三浦璃来(22)木原龍一(31)組(木下グループ)。日本のペア史に残る開拓者としての道を進む2人には、後進のために戦う意志があります。「枠」をめぐる木原の言葉から、26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪へ向かう胸中を知りました。
フィギュア
さえるジョーク
「調子が悪くなってストレッチャーに乗らせていただいたんですが、普段は(演技で)リフトをする側なので、パートナーの気持ちが分かりました」
木原は軽妙なジョークを飛ばしていた。
3月23日の午後5時25分から会場隣接のファンサイトで行われたフリーの「スモールメダルセレモニー」での一幕。
21日のフリー演技後に運動誘発性ぜんそくとみられる症状でもうろうとし、ストレッチャーに横になる事態に。直後の表彰式を欠席。「2人で1つだから」と1人での出席を丁寧に辞退した三浦と2人、あらためてこのセレモニーで銀メダルを授与されていた。
その中で、今週のハイライトを聞かれた時の絶妙な回答が冒頭の言葉だった。出席していた国際スケート連盟(ISU)の会長ら、優勝したディアナ・ステラートデュデク、マキシム・デシャン組(カナダ)、そして多くのファンから爆笑を取る姿があった。急病から2日、心配する周囲への感謝を述べた後のさえたジョークが、アスリートとしての強さをより印象深くした。
「枠」がもたらすもの
それから6時間ほど前の事だった。
にこやかだったセレモニーとは対照的な、引き締まった顔で話す木原から、その覚悟を伝えられた。
「過去2大会、補欠や誰かにいただいたものを使っていたので、僕らが頑張らないといけないんです」
言及していたのはオリンピックの出場枠についてだった。
北京五輪を終えた頃から、特にペア競技の未来についての思いを言葉に乗せるようになっていった。どうしても練習環境が制限される日本で、いかに続く選手を輩出できるか。シングルからペアに転向して10年以上がたち、かつての自分のような若手の背中を押せる事は何かを常に考えてきた。
その最も重要なのが「枠」だった。
フィギュアスケートは他競技には事例が少ない制度を持つ。その年度の最高峰の大会となる世界選手権が、次年度の大会の各国の出場枠に直結し、それがオリンピックにも適用されている。特殊性はその配分で、出場者(組)の数と成績によって、細分化されている。そして1人(組)が最大3枠を獲得できる可能性がある。
25年世界選手権で争われる26年五輪の国・地域出場枠
| 枠数 | 合計順位 | 出場人(組)数 |
|---|---|---|
| 3 | 13位以内 | 2 |
| 2位以内 | 1 | |
| 2 | 14位-28位以内 | 2 |
| 3位-10位以内 | 1 | |
| 1 | 3枠、2枠を獲得していない国・地域の上位順 |
※男女シングル24人、ペア16組、アイスダンス19組を決定。残りの男女シングル5人、ペア3組、アイスダンス4組は25年秋の予選会で決定
個人競技において、1人が複数枠に貢献できるケースは少ない。そういった意味で毎年の世界選手権には独特の雰囲気が漂い、選手の心理に特殊な重圧をもたらす。
今大会の女子で56年ぶりの3連覇を果たした坂本花織は、初優勝した2022年大会ではフリー演技前に泣いていた。日本3選手の最後に登場したが、3位以下になれば翌年の出場が2枠に減る危機だった。中野園子コーチに「怖すぎる」と漏らした。試合前に泣くのは5季ぶりだった。師の言葉に「ここまで頑張ってきたものを無駄にしたくない」と震えを落ち着かせ、勝ちきった。
それから3年連続の優勝。今回はさらに日本女子を引っ張っていく気概にあふれていた。3枠を決めて帰国した羽田空港で言った。
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2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて17年。25年4月に初の異動で野球部へ配属となりました。競技経験はありませんが、現在は息子が通う少年野球チームで“球拾い”コーチとして奮闘中。記者としても、様々な話題を拾います。ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。クラフトビール好きです。
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