辰吉寿以輝の現在地〈2〉父丈一郎の不安「ブランク、俺はわかる」 復帰戦の結末

平成のカリスマ、丈一郎を父に持つ辰吉寿以輝(27=大阪帝拳)。

一途に世界王者を目指している。

それは日本初の親子世界王者につながる道だ。

8月6日に2年9カ月ぶりの試合に臨んだ。

フェザー級ノンタイトル8回戦でアマエリートの山原武人(23=泉北)と対戦。

長期ブランクを乗り越えて、5回TKO勝ちした。

第2のスタートとなった復帰戦を詳報する。

ボクシング

「一途(いちず)~辰吉寿以輝の現在地~」 随時配信中

2年9カ月ぶりの試合を前に、前日計量をクリアした辰吉寿以輝(左)と対戦相手の山原武人

2年9カ月ぶりの試合を前に、前日計量をクリアした辰吉寿以輝(左)と対戦相手の山原武人

2年9カ月ぶり、相手はアマエリート

8月6日正午過ぎ、大阪・天満橋に位置する大阪エル・シアター。

大阪帝拳ジムがある京橋駅から京阪電車でわずか1駅。ホームといえる劇場型の会場に、寿以輝は1人でトートバックを持って入ってきた。

その時間、リング上にはシャドーボクシングを繰り返す山原の姿。2時間後に拳をまじえる相手を、ちらりと見て、控室に向かった。

お客を入れる前のがらんとした会場に、緊張感が漂った。

実に2年9カ月ぶりとなるプロ15戦目。

ボクシングで試合間隔が1年以上空くとブランクといえる。

寿以輝は、けがやコロナ禍が重なって長い空白期間をつくった。

スーパーバンタム級で日本7位まで上がっていたランキングも失った。

相手は1階級上、しかも全日本選手権で準優勝したアマエリート。

プロ戦績は2勝(2KO)1敗も、アマ戦績は29勝16敗だった。

陣営が「日本人相手」を希望したとはいえ、復帰戦の相手としては、骨がある。

プロ戦績では13勝(9KO)1分けの寿以輝が実力上位だが、関係者の中には「これ、負けもあるでしょう」と予想する者もいた。

決してイージーな相手ではなかった。

何より、久しぶりのリングで寿以輝がどこまでやれるか、未知数だった。

そんな周囲の味方をよそに、寿以輝は自信を口にしてきた。

27歳の誕生日だった8月3日、大阪帝拳ジム。

サウナスーツではなく、Tシャツと短パンで練習して、フェザー級のリミット57・1キロを楽々とクリアした。

「寂しい誕生日ですね。(お祝いは)何もない。(家族に)歌を歌ってもらったぐらいですね」と軽口をたたいた。

そしてバイクをこぎながら、言った。

「やることはやった。3年前よりもパンチ力もついている。スタミナの不安も全くない」。

前日計量の8月5日。

寿以輝はリミットから400グラムアンダー。

200グラムアンダーだった山原とともに、一発で計量をクリアした。

握手も、言葉のやりとりもなかった。

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スポーツ

益田一弘Kazuhiro Masuda

Hiroshima

広島市生まれ。2000年の入社からバトル、相撲、サッカー、野球を担当して、13年からオリンピック担当。
14年ソチ、16年リオデジャネイロを取材して、18年平昌、21年東京は五輪班キャップを務める。東京五輪後に一般スポーツデスク。
大学時代はボクシング部で全日本選手権出場も初戦敗退。アマチュア戦績は21勝(17KO)8敗。