元日の午後4時10分、石川県出身の西橋奈未(27=福井)は神社にいた。母と一緒にお参りを終えた頃、突然、灯籠が落ちてきた。

歩けないほどの激しい揺れ。「鳥居が崩れそうだった」(西橋)。母の手を引き何とか車へ。金沢市内の自宅のドアを開けると、鏡は倒れ、テレビも神棚も落ちている…。「上にあったものは全部、落ちていた」。愛猫は無事だったが、ずっと震えていた。

友人も被災した。西橋の信頼するトレーナーは、能登に帰省中だった。悲惨な状況を聞き、心は痛んだ。「友達の実家もめちゃくちゃになったり…ニュースを見るたびに悲しくなる」。言葉をやっと紡ぐように、西橋は言った。


西橋奈未(2024年1月26日撮影)
西橋奈未(2024年1月26日撮影)

年始の尼崎は欠場、15日の津から復帰した。「私、何もできない。つらいですね」。走ることはできる? と問うと「そう。走ることが一番のボランティアになるかも」と答えた。その心は、舟券の一部が復興資金になるという思いがある。

日本財団は地震の後、すぐに支援を開始。輪島港に灯油2000リットル、軽油1000リットルを海上輸送、段ボールベッド1200台に個室シャワーなどを届け、「重機チーム」が現地に入り、道路の啓開作業、車両の救出…活動内容は多岐にわたる。

同財団はボートレースの売り上げの約3・1%を財源とし、さまざまな事業支援を行う公益財団法人。1962年(昭37)設立。2016年の熊本地震の際には、いち早く総額93億円の支援を決めた。巨額の支出を支える原資は舟券だ。

舟券が売れれば、被災地支援につながる。「日本財団が復興を支援してくださるのは、本当にありがたいです。自分がその団体につながっていることも、ありがたい。走ることで、少しでも被災地に還元できれば」。

西橋の次節はG1近畿地区選。強豪男子を打ち負かせば、売れること請け合い? 個人的には、エールも込めて石川県出身レーサーの舟券はこれから多めに買おうと思う。