これまで有事の際に、復興の役に立ってきたのが競輪事業だ。未知のウイルスが世界中で猛威を振るっている今年、競輪界も大きな打撃を受けた。そして、G1日本選手権の中止は、選手1人1人の意識を変えた。

105期の清水裕友、渡辺雄太、石塚輪太郎の寄付は、ガールズケイリンの有志による「エールオークション」へとバトンをつなげた。

現在は、脇本雄太が中心となり「チャリティーオークション」も行われており、村上義弘、浅井康太、松浦悠士、清水裕友ら、有名男子選手がお宝グッズを出品している。

さらに個人での活動も増えてきている。

戸辺裕将はフェースシールドを取手競輪の指定病院に寄付した(左は守谷第一病院の駒田共章事務部長)
戸辺裕将はフェースシールドを取手競輪の指定病院に寄付した(左は守谷第一病院の駒田共章事務部長)

6月G3取手の後には、日本競輪選手会茨城支部長の戸辺裕将(48)が動いた。取手競輪の指定病院である総合守谷第一病院と、取手北相馬保健医療センターに、フェースシールド200個ずつを個人的に寄付。「日ごろから落車した選手の受け入れ態勢がとてもスムーズで、その感謝の気持ちです。喜んでいただけて良かった」と語った。

田口守、梓乃夫妻はマスク2500枚を防府市に寄付した
田口守、梓乃夫妻はマスク2500枚を防府市に寄付した

山口の田口守(32)梓乃(27)夫妻は、有観客を再開した防府競輪のファンのために、岡田元子競輪局長を通じてマスク2500枚を防府市に贈った。「有効活用していただけたらうれしい。この状況が1日でも早く元通りになって欲しい」と収束への願いを込めた。

こうして自主的に立ち上がった選手による社会貢献の輪は広がり続けている。令和時代に入り、業界全体の体力の低下は否めない。それでも何かがあれば立ち上がるという競輪界の良心は生きている。【松井律】