山陽のさばき巧者・松尾啓史(39)が、06年山陽のスピード王決定戦以来、2回目のG1優勝を飾った。グレード戦ではV戦線の常連だけに、タイトル奪取を弾みに18年は大きな飛躍を狙う。

 Vロードが見えた。最終周回のバックだ。射程圏に入れた渡辺篤の内に切れ込む。試走24をたたき出したマシンが、一気に突き抜ける。「エンジンは納得の状態。ドドドが解消したし、落ち着いて前を追った」。課題のスタートは互角に切れた。「朝練が良かったので、練習と思って切った」。優勝への歯車はしっかりかみ合った。

 17年はG19回のうち3回で優出。過去にSGでも12回でファイナリストになっている。スキルは十分にあるが、届かなかったVを手にし、「ものすごくうれしい。今まで展開が向かなかったり、いろいろあったから」と喜びをかみしめた。

 表彰式では初めてのシャンパンファイト。上手にビンを動かすことができず、自分にかかってびしょぬれに。「うれしさが緊張に変わった」。忘れられない初体験が、レースでもきっと生きる。【天野保彦】