<アジア杯:日本1-3カタール>◇決勝◇1日◇UAE・アブダビ

【アブダビ(UAE)2日】日刊スポーツのサッカー担当記者が独自の視点で分析する「Nikkan eye」。準優勝に終わったアジア杯UAE大会からの最終回は、UAEで取材を続けた日本代表担当の浜本卓也記者が、準Vに「準備」という側面から切り込む。

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日本が0-2で迎えた後半開始直前、期待していた光景は目の前に広がらなかった。前半はカタールの両ウイングバックがほぼDFラインに加わるほど引いた“5バック”の布陣と攻撃陣がかみ合わず、シュート3本で無得点。準決勝まで無失点の相手守備網を崩すのは容易ではなさそうだった。打開策として選手交代という「変化」を講じることを想起したが、森保一監督(50)は「継続」に突破口を見いだそうとした。

昨年のW杯ロシア大会でのベルギー戦が脳裏をかすめた。日本が後半7分に2-0とリードを広げると、ベルギーは同20分にMFフェライニとMFシャドリを一気に投入。9分後にフェライニが同点弾、同49分にシャドリが決勝弾。局面を打開するための二の矢、三の矢の威力を思い知った。

日本も22年W杯でベスト8を目標に掲げる以上、アジア勢相手に苦境を打開する力強さを見たかった。結果は後半に3失点目を喫し、なすすべなく1-3で敗戦。森保監督は「選手が思いきってプレーできる状態に準備できなかった自分の責任かなと思っています」と敗因を語った。

常々、指揮官が重視する「準備」という言葉。カタール戦だけではなく、今大会は劣勢をはね返すための「準備」が足りなかったと感じる。ビハインドの展開を打破するには、3人の交代枠の重要度は高くなる。前回優勝の11年大会では細貝萌、李忠成が“ジョーカー”として結果を出した。今大会は1次リーグ3戦目でターンオーバーしたものの、2試合目まで交代枠を残した。昨年の国際親善試合5試合は6人の交代枠を使い切ったのは2試合だったが、選手選考のために長くプレーさせてどれぐらいできるかを重視したので理解できる。勝利のみを求められる大会は違う。今大会7試合で途中出場の得点者はゼロ。主力組が出た試合で停滞した局面を打開する“引き出し”を増やしておく「準備」を、決勝トーナメントまでにしてほしかった。

就任後12戦目での初黒星にも、光明も見えた。決勝戦後、ピッチ上で行われた表彰式。森保監督は選手の一群に近づき、ねぎらって回った。そこから森保監督らしさが出た。途中出場のMF乾と身ぶり手ぶりで試合の反省点を列挙しはじめていた。悔恨を糧にしようとする向上心が、指揮官の胸中に広がっていたのだろう。即席の“反省会”はしばらく続いた。ベテランと若手が融合しての準優勝。課題はあるが、伸びしろもある。この姿勢がある限り、森保ジャパンは、もっと強くなる。【浜本卓也】

◆浜本卓也(はまもと・たくや)1977年(昭52)、大阪府生まれ。03年入社。プロ野球担当から、昨年12月にサッカー担当に復帰した。