8年前のリオデジャネイロ・オリンピック(五輪)予選敗退を知るGK山下杏也加(28=INAC神戸)とDF熊谷紗希主将(33=ローマ)のベテラン2人が、パリ切符死守の後ろ盾となった。

山下は前半45分、相手シュートをゴールライン上で防ぐビッグセーブ。熊谷も3バックの最終ラインを引き締め、北朝鮮の反撃を許さなかった。

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“山下の1ミリ”が、勝負の分水嶺(れい)となった。1-0の前半45分、ニアサイドに入った北朝鮮FWチェ・グモクが右足ヒールで合わせるトリッキーなシュート。ボールはファーポスト際へと転がった。山下はニアサイドにあった重心をすぐに切り替え、ボールに向かって跳んだ。ゴールライン上を通過するボールに対し目いっぱい体を伸ばし、右手でかき出した。

ボールの半分以上はインゴールにあった。まさにミリ単位の世界。男子の22年ワールドカップ(W杯)カタール大会スペイン戦で起きた「三笘の1ミリ」をほうふつさせた。「ボールが見えた。スピードも大丈夫。いい姿勢だったので間に合った。ホッとしました」。守護神が救った。

勝つか負けるかで、大違いだ。8年前は予選で敗退し、その後の不遇の時代を知る熊谷も「あのプレーが大きかった。今日は勝つことが全てだった」。第1戦は4バックで戦ってDFラインの役割がぼやけ、ロングボールを前ではね返せなかった。反省を踏まえて3バックに変更。おのおののやることがはっきりし、1失点こそしたが自信を持って対応できた。12年ロンドン大会以来12年ぶりに、地力で五輪への扉を開いた。

女子サッカーの未来を懸けた戦い-。主将の熊谷はそうチームにハッパをかけた。「パリでも金メダルを取れるポテンシャルがある」。厳しい最終予選を乗り越え、チームの視界は一気に広がった。【佐藤隆志】

なでしこ、パリ五輪出場権獲得!北朝鮮に2-1で勝利 「山下の1ミリ」救った/ライブ詳細