<オーストラリア発・記者コラム>

 アジア杯準々決勝日本-UAE戦が行われるシドニーのスタジアム・オーストラリアは、日本人にとってなじみのあるスタジアムだ。

 00年シドニー五輪女子マラソンで高橋尚子選手が金メダルをとった場所。当時大学生の自分もテレビにくぎ付けで見た。翌日の日刊スポーツの1面を読んで、また胸を熱くしたのを覚えている。

 22日に日本代表を練習取材した後、スタジアム内に地下通路を見つけた。スタジアムを囲む道路から、中へとつながるコンクリートに囲まれた下り坂。高橋選手が走ったコースなのだろう。サングラスを外し沿道へと投げ捨てたのを合図に、スパートを切ったのは有名な話。宿敵・シモンとの激走を制した後、栄光のフィニッシュに向けて、この通路をどんな思いで駆け抜けたのだろうか。

 テレビや紙面で見た当時のように、今思い返しても胸が熱くなるシーンだ。現在は改修されて球技場となっており、陸上トラックはなくゴールテープを切った、あの場所はもうない。しかし15年前の記憶はしっかりと刻まれ、日本人の記憶から消えないだろう。

 日本代表が勝ち進めば、決勝で再びこの場所に戻ってこられる。数年後に、こうやって語り継がれるようなシーンが、生まれてくれたら、現場にいる記者にとってこんな幸せなことはない。【栗田成芳】