最後の1枚の切符を懸けた争いは過去に例を見ないハイレベルになる。

今秋の世界選手権(ドーハ)の最終代表選考会である日本選手権男子50キロ競歩を翌日に控えた13日、石川・輪島市内で会見があった。

16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)五輪銅、17年世界選手権銀メダルの荒井広宙(30=富士通)、17年世界選手権銅メダルの小林快(26=アルビレックス新潟)、17年世界選手権5位の丸尾知司(27=愛知製鋼)。他にも20キロ競歩で結果を残すメンバーも多く参戦する。世界歴代9位の記録を出した川野将虎(20=東洋大)、世界記録を持つ鈴木雄介(31=富士通)、リオデジャネイロ五輪で7位に入った松永大介(24=富士通)も名を連ねる。世界を舞台に活躍する男たちが、残り1枠を巡って戦う。

その中でも実績一番で、優勝候補の荒井は余裕があった。「(レベルが)異常だなという感じがしますね」とした上で「それだけ日本のレベルが上がっている。勝った人が世界選手権に出るべき。明日は厳しい戦いになると思うが、それぞれが最大限の能力を発揮できたら」。昨年1月末で自衛隊を辞め、4月から富士通の所属となった。新たな所属先での初戦にもなる。

小林は17年世界選手権で、荒井から声をかけられながら、同じペースを刻み銅メダルを獲得した。その時はサポートを受けた格好だったが、今回はライバルになる。小林は「あの時のように荒井さんは水を渡してくれないと思う。あの時のままだと代表権を獲得できず、荒井さんに負けてしまう。あの時を超えないと、と思う。過去にとらわれず、今の力を出し切るだけ」。穏やかな表情の中で、対抗心をのぞかせた。

ロンドンでは表彰台を逃した丸尾も虎視眈々(たんたん)と優勝をうかがう。「この状況が決まった時は正直、つらいなと思ったが。自分の中で覚悟が決まった。これを乗り切れれば成長させてもらえる。2年前から成長した姿を見せられるように精いっぱい歩きたい」と口にした。

世界選手権の男子50キロ競歩代表は、昨夏のジャカルタ・アジア大会で金メダルを獲得した勝木隼人(28=自衛隊)、昨年10月の全日本50キロ競歩高畠大会を3時間39分47秒の日本新記録で優勝した野田明宏(23=自衛隊)の2人が代表に内定している。その2人も今大会に参戦。野田は「負けるのは悔しい。勝ちきることを目標にしたい」と語った。勝木はジャカルタ・アジア大会ではフォームが乱れ、5分間立ち止まる警告を受けただけに「誰にも(反則を)取られないフォームを作ってきたつもりです」。記録や順位は意識しないが、成長を確認するレースにする。

日本陸連の派遣設定記録3時間45分0秒を破り、優勝すれば、世界選手権の代表に内定する。世界選手権は日本人最上位かつメダル獲得で20年東京五輪代表に内定を勝ち取れる。