27日に開幕する陸上の日本選手権(博多の森陸上競技場)の100メートルは男子だけでなく、女子も熱い。北海道・恵庭北高3年の御家瀬緑が、女子100メートルでは29年ぶりとなる高校生Vを目指す。

前回大会で4位に入り、昨夏のジャカルタ・アジア大会では女子400メートルリレー代表入りを果たすなど注目を浴びた18歳。今年4月の織田記念国際では11秒54で高校歴代2位タイ。5月には向かい風0・2メートルの条件下ながら、11秒57の好タイムを残した。伊藤佳奈恵、北風沙織、福島千里を育てた北海道ハイテクACの中村宏之監督(74)から指導を受ける。今年、発足した女子リレーの強化プロジェクトには参加せず、自身の練習を優先した。11秒54は今季の日本勢女子2位のタイムだ。90年三木まどか(姫路商)以来となる高校生での優勝を、はっきりと視界に捉える。

また埼玉栄高時代に11秒43の高校新記録を樹立し、12年ロンドン五輪には女子400メートルリレー代表として、日本陸上界で戦後最年少出場を果たした土井杏南(23=JAL)も低迷を乗り越え、再びトップスプリンターの位置に戻ってきた。6月の布勢スプリント予選では自身4年ぶりの11秒5台となる11秒52。「天才少女」もここ数年、腰痛や肉離れにも苦しみ、昨年は日本選手権の出場資格さえなかったが、昨夏から高校時代の恩師である清田監督に再び師事し、今季の日本勢女子最高タイムを残した。女子リレーの強化プロジェクトには参加していない中、5月の世界リレー大会の女子400メートルリレー第1走者にも抜てきされた。苦闘を乗り越えて、日本選手権の初優勝を目指す。その先に秋の世界選手権(ドーハ)の参加標準記録11秒24を見据える。

若手だけでなく、和田麻希(32=ミズノ)も充実している。社会人10年目の昨年は11秒53の自己記録をマーク。200メートルでも全日本実業団を制し、涙を流した。今季も好調を維持。布勢スプリント決勝では11秒63(追い風2・2メートル)で土井に次ぐ2位。優勝を十分に狙える可能性を秘めている。また独特の髪形もおしゃれで注目だ

17年100、200メートルで2冠の市川華菜(28=ミズノ)は春には体調を崩した時期もあったが、実力は健在。高いレベルでまとめられる力がある。持ち味である終盤の伸びを生かし、2年ぶりの栄冠を目指す。

大学生では湯浅佳那子(日体大4年)が5月の関東学生対校選手権決勝で追い風2・6と参考記録だったとはいえ11秒43。2位の山田美来(日体大2年)に0秒19差を付ける圧勝で、実力を示した。世界リレー大会女子800メートルリレー代表で、福岡大2年の児玉芽生も6月の日本学生個人選手権を制すなど、自信を付ける。

一方で、過去8度の優勝を誇り、11秒21の日本記録を持つ福島千里(30=セイコー)は欠場した。また連覇が懸かる世古和(27=クレイン)も本調子ではない。

御家瀬、土井の充実ぶりが光るが、誰が優勝してもおかしくはない大混戦。小さなミスが大きく順位を分けそうだ。

・日程

予選 27日午後2時35分~

準決勝 27日午後7時5分~

決勝 28日午後8時15分~

・主な出場選手(自己記録)

市川華菜(11秒43)

土井杏南(11秒43)

世古和(11秒50)

前山美優(11秒51)

広沢真愛(11秒53)

和田麻希(11秒53)

御家瀬緑(11秒54)

中村水月(11秒57)

西尾香穂(11秒69)

壱岐いちこ(11秒66)

児玉芽生(11秒69)

三宅奈緒香(11秒76)