陸上の日本選手権で100、200メートルの2冠を達成したサニブラウン・ハキーム(20=フロリダ大)が内定していた世界選手権(27日開幕、ドーハ)の200メートル出場を回避することになった。

7日、山梨県内であった世界選手権のリレー代表候補合宿で、日本陸連で男子短距離を担当する土江寛裕五輪強化コーチ(45)が「サニブラウン選手は(個人種目を)100メートル一本に絞る」と明らかにした。サニブラウンは合宿に参加していない。

理由は発展途上な体への負担を考慮した上で、金メダルを目指す400メートルリレーに力を注ぐこと。過去2大会出場した世界選手権も含めサニブラウンは故障が重なり、代表でのリレー経験がない。東京五輪を1年後に控える今。日本歴代2位の20秒08の自己記録を持ち、前回の世界選手権に続く決勝進出が期待されていた200メートルを回避してでも、リレー侍へより確実に加わる選択をした。

これにより、不安要素だったバトンの精度を高める時間も確保できる。男子100メートル準決勝、決勝が行われる大会2日目28日から400メートルリレーまで中5日。この期間で疲労を抜きながら、アンカーを想定したバトンの連係も深める予定だ。200メートルに出た場合、どこまで進出できるかによるが大会3、4、5日目とレースが続く日程だった。世界選手権の緊張感の中では体の負担も、いつも以上に大きい。個人2種目で出場した前回大会のように、400メートルリレーは欠場を余儀なくされる懸念もあった。

リレーは第1走者から小池祐貴(24=住友電工)、白石黄良々(23=セレスポ)、桐生祥秀(23=日本生命)、サニブラウンの布陣で挑む予定。小池は100、200メートルの両種目に挑むため、バトンは受けがなく、渡すだけと負担の少ない第1走者での起用。長い距離も走れる白石から、16年リオ五輪、17年世界選手権と第3走者でメダルに貢献した桐生とつなぐ。最後は100メートルで9秒97の日本記録を持つサニブラウンがフィニッシュまで駆け抜ける。桐生は「いつも通りもらって、渡すことが役目」。故障者が出なければ、9秒台スプリンター3人を擁するオーダーで挑む。

果敢に攻める。タイムは「37秒台前半」を目指す。日本記録は銀メダルだったリオ五輪決勝の37秒60だが、土江五輪強化コーチは「来年金メダルを狙う以上、アグレッシブに。失敗を恐れず積極的に、結果的に失敗でもよしとする」。見据えるのは1年後。東京五輪への確かな財産とする。

【上田悠太】