ゴルフ技術を向上させるための方法はいくつもある。本を読んだり、練習方法を教えてくれるネット動画も数多くある。

月に何度かゴルフコーチからレッスンを受けるという人もいるだろう。初心者であれば、基礎から教えてもらえるし、中級者や上級者であれば現在のスイングの分析と改善に関する指導が受けられる。


■欧米では珍しくないセミナーやプログラム


日本ではあまり馴染みがないが、アメリカではアマチュアゴルファー向けのセミナーやプログラムがある。その多くが室内で教科書や資料を用いた座学で基礎知識を学び、その内容を練習場で実践するというスタイルで行われている。


モー・ノーマンに直接指導を受けたというトッド・グレーブス
モー・ノーマンに直接指導を受けたというトッド・グレーブス

米フロリダ州オーランドで伝説のボールストライカー、モー・ノーマンが提唱した「シングルプレーン・スイング」のメソッドを学ぶため、3日間のプログラムを受けたことがある。モー・ノーマンから直接指導を受けたというトッド・グレーブスが主催するシングルプレーンアカデミーのプログラムは、アマチュア向けに室内での座学と練習場での指導を組み合わせた内容だった。

室内の座学では、モー・ノーマンの画像や映像を使いながら、腕とクラブを一直線にしてスイングするシングルプレーンの基礎を学ぶ。スライドを使いながら、セットアップから間違った事例まで丁寧に解説した内容だった。

画像や動画だけではなく、大事なポイントを文章化しており、30人ほどの参加者は用意された机の上でメモを取りながら、講師のプレゼンテーションに聞き入っていた。ゴルフのレッスンやセミナーというよりは、仕事の研修や勉強会といった雰囲気で、参加者は真剣な表情でシングルプレーン・スイングを学んでいた。


真剣に聞き入るアマチュア
真剣に聞き入るアマチュア

このような座学によるセミナーを受けることで、幅広い基礎知識を得ることができる。その後、頭が整理された状態でボールを打ちながら学んだ知識を実践するというステップは非常に効率的だ。


■問題解決をするレッスン、知識を学ぶセミナー


アマチュアの中には、コーチにレッスンで技術さえ教われば、座学などで体系的な知識は必要ないと思っている人がいるかもしれない。指導する側は幅広く知識や技術を教えたいと思っているが、レッスンの短い時間の中でそこまで伝えるのは難しい。レッスンの時間は限られているうえに、生徒が求めるものはスイングを良くするための処方箋だからだ。具合が悪くて病院に行くとき、患者は医者に現状が良くなるための治療をしてもらいたいはずだ。決して、医学の基礎や事例を学びに行くわけではないし、そのような話を長々とされても迷惑だろう。ゴルフの場合でも、レッスンは生徒の個別の問題を解決する場であり、セミナーはスイング構築の基礎や理論、事例など幅広い知識を学ぶ場なのだ。

セミナーでしっかり知識や理論を学んでおけば、レッスンを受けたときにコーチの指摘の意味や狙いが分かり、自分なりにどうすればいいのか考えられるはずだ。スイング構築の全体像が理解できることで、自分が行うべきことがより鮮明になる。


グリップの握り方から指導を行っていた
グリップの握り方から指導を行っていた

コーチと教わる側が共通の知識や認識を持っているかどうかで、レッスンの効果は大きく変わる。なぜなら、共通した知識がなければ教わる側は理解が進まないので、コーチの言うことを黙って聞き、言われた通りにするしかないからだ。

初心者なら、それで基本的な技術は学べるし、言われたことを繰り返せばある程度の結果は出るだろう。しかし、100を切り、さらにシングルを目指そうと思えば、それではレベルアップは望めない。中級者、上級者となると、コーチが言っていることの意味を理解し、自分なりに考えて練習を行う必要があるからだ。

たとえば、コーチに「ダウンスイングで急角度にクラブが下りている」と指摘されたのなら、なぜ急角度にクラブが下りるのか、クラブが急角度に下りるとどうなるのかくらいは理解しておきたい。その現象の原因や影響も理解しないまま、コーチに解決策を提示してもらっても、その解決策を行う意味や必要性を理解できないため、自分で工夫しながら効果的な練習を行うことができない。その結果、同じことの繰り返しとなり上達は望めない。


何事においても物事を考えるためには、基礎となる知識が必要となる。中・上級者を目指すのなら、体系的な知識や理論を学ぶことは重要なことだ。科学的に裏付けられた、間違いのないゴルフスイングの基礎を学んでほしい。

(ニッカンスポーツ・コム/吉田洋一郎の「日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)

◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。2019年度ゴルフダイジェスト・レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。欧米のゴルフスイング理論に精通し、トーナメント解説、ゴルフ雑誌連載、書籍・コラム執筆などの活動を行う。欧米のゴルフ先進国にて、米PGAツアー選手を指導する100人以上のゴルフインストラクターから、心技体における最新理論を直接学び研究している。著書は合計12冊。書籍「驚異の反力打法」(ゴルフダイジェスト社)では地面反力の最新メソッドを紹介している。書籍の立ち読み機能をオフィシャルブログにて紹介中→ http://hiroichiro.com/blog/


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