諸見里しのぶ
諸見里しのぶ

クラブハウスの階段で目が合うと、彼女は深いため息をついた。無理な作り笑いをしながら、つぶやく。

「ダメでした。(スコアを)伸ばせなかったです」

どんな声をかけたらいいか、すぐには分からなかった。悲観的に捉えられがちなその言葉を何度か、頭に巡らせてみる。ごくごく当然のことかも知れないが、彼女はまだ戦っていた。もっとうまくなりたい、再び強くなりたい-。

そんなギラギラとした闘志が、今も彼女の胸の中にくすぶっているように思った。少し考えてからその事実を悟り、私は言葉を絞り出した。

「大丈夫。きっとまた、僕は強くなれると信じています」

諸見里しのぶ(32=ダイキン工業)とそんなやりとりをしたのは、昨年11月30日に兵庫・東急グランドオークGCであったファイナルQT最終日のことだった。前日の第3日で78とたたいた彼女は、18年のレギュラーツアー前半戦の出場権を得るためには、最終日に是が非でもスコアを伸ばさなければいけなかった。

無情にも結果は72で、出場権が遠のくQT68位。19年は下部ツアーか、最大8試合ある推薦でのレギュラーツアーに限られることとなった。

呼吸も苦しむほどの肋(ろく)軟骨炎と、アレルギー治療のため15年末に休養を宣言。16年は限定で7試合だけ出場したものの、全て予選落ちし、年間獲得賞金はプロ転向後初の0円だった。09年に6勝を挙げ、賞金ランク2位となる約1億6525万円を稼いだかつての面影を失った。

それでも不屈の闘志で復帰し、17年には約151万円、18年は約673万円を獲得。ゆっくりとした歩みではあるが、復活への階段を上りつつあるのは確かだろう。

今年もまた、国内女子ツアーは諸見里の故郷沖縄で開幕する。ホステスプロとして臨むダイキンオーキッドレディース(3月7日開幕、琉球GC)に向け「いかに上位に食い込めるかが、大きなポイントになると思うので、昨年以上の成績を目指して頑張っていきたいです」と語り、調整は最終段階に入っているようだ。昨年の同大会は、優勝争いを繰り広げ3位。沖縄のファンは、09年以来10年ぶりとなる復活優勝を心待ちにしていることだろう。

最近は、黄金世代を中心にした若手の成長が著しい。だが、苦労を味わったベテランが輝くのも、見てみたい。【益子浩一】