「モンスター・コース」が、ゴルフ人気回復のヒントになるかもしれない。5月30日から4日間、茨城・ザ・ロイヤルGCで開催されたミズノ・オープンは、ツアー史上最長となる8000ヤード超の距離で行われた。

「世界基準」をテーマに、メジャーで通用する選手の輩出を念頭に作られた同コース。距離が長いのはもちろんだが、グリーンだけでなく、フェアウエーもアンジュレーション(起伏)が強く、超難関コースになっている。単に飛距離を出せばいいというものではない。落としどころが難しいだけにアイアンショットの正確性、アプローチ、パッティングと小技も要求され、選手のコースマネジメントが問われるセッティングになっている。

8000ヤードを超えた第3ラウンドは、まさに見応えたっぷりだった。池田勇太(33=フリー)がこの難コースを攻略し、66(全選手の平均75)をマークし、トップに躍り出た。飛ばし屋だが小技も見せる。3番から4連続バーディーを奪い、13番パー5では、残り238ヤードの第2打をカラーまで運んでイーグル。16番までに8バーディーで、難コースで一時は通算9アンダーまで伸ばす爆発的なプレーでファンを魅了した。

17、18番でスコアを落とし、自身は納得しなかったとはいえ、池田の組はまるで最終日のように多くのギャラリーが集まった。池田は「距離は長く感じなかった。自分のゴルフが生かせるセッティングにがぜん、やる気になる」と話したが、待ち受ける難関コースに、プロ選手が自分の技でどう立ち向かっていくのか? ゴルフの醍醐味(だいごみ)と言える、「選手対コース」の戦いをみせることで人気回復につながりはしないか?

残念だったのは、8000ヤード超で行われたのはこの第3ラウンドだけだったこと。8000ヤード超というキーワードは、観戦に訪れるファンにとって、そのコースで何が求められているのかが実に分かりやすい。だからこそ、名物コースになり得るはずだし、集客につなげられるはず。4日間とは言わずとも、せめて決勝ラウンドだけでもこの距離でやってほしかった。昨年から選手会長になった石川遼(27=CASIO)が競技の人気回復、底辺拡大に向け、さまざまな戦略を打ち出しているが、コースの充実も必要不可欠だと思う。

メジャー第1戦のマスターズでは、数々のドラマを生んできたオーガスタの象徴とされる「アーメンコーナー」(11~13番)と呼ばれるコースがある。祈りたくなるほど難しいコースが、優勝への明暗を分けることをファンは知っている。だからこそ、そのホールは最終18番に匹敵するほどの人が集まる。さらに、練習ラウンドでは、16番の恒例の水切りショット。さらに、各コースに名前がつけられているように、コース、ホールの明確な意図が伝わり、「見たい」という思いを駆り立ててくれる。

もちろん、マスターズは、長い歴史が紡いできたものではあるが、8000ヤード超を前面に打ち出すことでファンの「見たい」願望をくすぐれないかと思う。日本には他にも特色のあるコースがある。各コース、ホールから突きつけられた「難題」に、選手がどう「答え」を出すか。その攻防が、「名物コース」を生み、後々の集客につながるのではと思う。【松末守司】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)