ゴルフパートナー・エキシビションマッチは新鮮だった。久々の男子のプレーを見られたこともあるけど、何よりセルフバッグ。新型コロナ対策の人数制限、2日間36ホールのツアー外競技でもあり、キャディーを使わない。石川遼らがバッグを担ぎ、多くの選手がカートに乗せて歩く様は、興味深かった。

ゴルフ場のハウスキャディーが激減する中、レギュラーツアー競技(下部ツアーは別)でプロキャディーは不可欠な存在になった。助言を求められるただ1人の存在の重要性。残り距離、風向き、クラブ選択、グリーン上のライン読み…などプレー中に発生する多くの選択において、第三者として「参謀」「コーチ」「おだて役」「なだめ役」になってくれる。

体力的にも大きい。多くのプロのバッグはメーカー、スポンサーの宣伝材料となるため、スタンド付きの軽量タイプでなく、フルスペックタイプになる。自重約5キロに加え、クラブ14本、その他もろもろが入り、重さ十数キロになるバッグを3~4日間持ち運ぶ。仮にカートを使っても、かなりの力作業になる。

緊迫する局面で、それらを担う。プロキャディーの歩合給「賞金の7~10%」は高くない。セルフバッグで、キャディーなしでレギュラーツアーを戦うことは、やはり非現実的だ。

とはいえ、たまにはいいではないか。タイガー・ウッズがプロ転向した96年頃、幼少時の映像をよく見た。小さな子供がバッグを背負って歩く。自分で距離を計算し、クラブを選び、打つ。ジュニア育ちの多くのプロにとって、それは“原点”だ。

約20年前、あるトッププロが話してくれた。

「プロになって2、3年は帯同さん(プロキャディー)をつけず、ハウスさんでやった方がいいかもね。帯同が力になるのは間違いないけど、まずプロ個人が“ゴルフ力”をつけるっていうか。人に頼らず、自分で考え、プレーする。それができない、何でも帯同さん任せじゃ、つまらない。自分の基礎を固めて、帯同さんをつけて、そこからさらにグレードを上げていくのが理想じゃないかな」

実は日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)は、レギュラーツアーをキャディーなしで戦うことを認めていない。「誰の力も借りず、自分の有利にならない形で戦うことを否定する? 何か相当の理由があるんやないか?」と期待して、JLPGA関係者に話を聞いて、肩すかしを食った。「明確な根拠はないようです。規約を作る際、海外がそうだから、慣習的に倣ったのではないか」。え? それだけ? なんて不思議な規則や。

ゴルフは自己責任の競技。競技委員はいても、レフェリーはいない。1人で考え、判断し、責任を負う。そこで年に1試合だけ、キャディーに頼らぬゴルフ力No.1決定戦はどうでしょうか? 歩測も、高低差の判断も大事なんで、距離計測器は使用不可。ベテランのために電動カートはOKで。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

1番、ティーショットを放った後、セルフプレーのため電動アシストカートを使って移動する今平(左)と池田(2020年7月9日撮影)
1番、ティーショットを放った後、セルフプレーのため電動アシストカートを使って移動する今平(左)と池田(2020年7月9日撮影)