非常に難しい問題だと感じた。1月2、3日に行われた箱根駅伝で、新型コロナウイルス感染症対策として、沿道で観戦しないよう呼びかけられていたが、多くの人が立ち止まって観戦していた。昨年はシニアツアーを除き、国内で行われた男女のツアーが、全試合で無観客だったプロゴルフを有観客にした場合、どうなるかと考えた。全18ホールを動いて観戦することができる従来のスタイルだと、人気選手のいる組にギャラリーが集中する。「密」になりやすい環境。これをスムーズに解消する方策を、うまく見つけられない。

箱根駅伝は公道を使い、市民生活の延長線上で行われている競技だけに「観戦するな」と言っても限界がある。強制力がない。一方、プロゴルフを有観客とした場合、訪れるのは明確に観戦を目的とした人ばかり。少なからず選手をリスペクトし、迷惑をかけないよう努めるとは思うが、わざわざ観戦に訪れている人でもある。より良い位置で、より近くで、好きな選手を見たいと思うはず。「自分だけなら」と思ってサインを求めることもあるかもしれない。入場料の有無にかかわらず、それらを強制的に排除するのは、プロとしては心苦しいと思う。

ゴルフは「紳士のスポーツ」と呼ばれる。それでもモラルやマナーで、観戦する人に訴えかけるには限界があるのではないかと、新年早々感じた。人気選手や、優勝争いをしている選手を分散させた組み分けにすればよいかといえば、それも違う。映像を撮る人員にも限りがあり、テレビ観戦するファンに十分な情報を伝えきれない。何よりも最終日などは、優勝を争っている成績上位者同士が同組で回る中での、スーパーショットの応酬や駆け引きなどこそ、スポーツの醍醐味(だいごみ)といえる。それがなければ、プロスポーツとしての人気も、選手の競技力も低下してしまうように思う。

日本ゴルフツアー機構(JGTO)の青木功会長、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の小林浩美会長と、男女ツアーの両トップは、ともに今年、ギャラリーを入れての開催を目指すと明言している。ただやはり、双方とも一筋縄で解決はできないとの認識。入場者数、観戦可能なホールなどを制限した場合、入場券を求める段階や、観戦しやすいホールで「密」にならないか。ゴルフは観客が広範囲を移動しながら観戦できる、非常に珍しいスタイルのプロスポーツだけに、他競技を参考にしにくい面もある。

コロナ禍での有観客の実績がない国内男女ツアーだが、春の開幕までに議論を重ねれば、世界のゴルフ界の手本となるような、観戦スタイルを導き出すことも可能だと思う。多くの選手は、ギャラリーの声援で普段以上の力が発揮できると感じている。見えないウイルスの脅威にさらされる期間が、一定期間のうちに終息する保障もない。現状では今夏、五輪を開催し、入場券も販売している。あくまでも現時点ではその予定。「中止になるのでは」と、誰もが頭をよぎるが、決定したわけではない。

今はあらゆる可能性を想定して準備するべき時。五輪で突然の有観客試合を迎えた日本代表選手が、アウェーのような違和感を抱えて戦う事態となれば、日本ゴルフ界には後悔しか残らない。何よりも、選手もファンも、観戦してもらいたい、観戦したいという純粋な思いが、昨年以上に高まるように思う。実際に会場で観戦できるのは、感染拡大に歯止めがかかってからにはなるが、難しい問題が少しでも解消されることを願いたい。【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)