今年9戦で4勝をあげている稲見萌寧(21=都築電気)の勢いが止まらない。4月は06年の大山志保、19年の鈴木愛に次ぐ史上3人目の月間3勝を達成。昨年と統合されている今季の獲得賞金も1億円を突破した。昨年までの優勝は19年7月のセンチュリー21レディース、20年10月のスタンレー・レディースと年1度ペースだったが、今年は9試合中、トップ10を逃したのはわずか2試合のみ。初日で出遅れようが最終日までには常に上位へと浮上し、ツアーを盛り上げている。

そんな活躍に呼応するようにコース外の動きも活性化している。4月29日にはIT大手の楽天とスポンサー契約を結ぶことを発表。楽天はこれまでサッカーの元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキーや米プロバスケットボール、NBAのスター選手であるステフィン・カリー、男子バスケの河村勇輝、馬場雄大の4人とパートナーシップ契約を結んでいるが、同社によると「パートナーシップ契約はスポンサー契約よりも広い取り組み」とのこと。ゴルフ界の枠を超え、他競技のアスリートらとも交わしていなかったスポンサー契約を初めて結んだことに、強い期待が感じられた。

同社はチーム単位ではプロ野球の楽天やJ1のヴィッセル神戸の運営なども行っており、稲見も田中将大やイニエスタらの名前を挙げた上で「私で大丈夫なのかなと思ったりもしますけど、うまく貢献できたらいいなと思います」と意気込んだ。

4月26日には従来のスポンサーでもある日本生命サポートのもと、同社公式YouTubeチャンネル内のコンテンツとして「稲見萌寧のゴルフチャンネル」がスタート。第1回ではショットの練習方法や実戦での取り組みなどを公開した。加えて4月27日発売のゴルフ雑誌「週刊パーゴルフ」では初の表紙にも抜てき。稲見は以前、YouTube参戦を問われた際に「自分はあまり面白いこととかできない。私は裏で練習で頑張ります」と話すなど、積極的には前に出ないタイプ。関係者によると徐々に周囲の反応も変わってきているといい、昨今の成績が目に見える形となってきている。

心配されるのは多忙による体調面だろう。19年から本格的にツアー参戦し、ここまで上位争いを続けながら連戦をこなすのは初めて。大会中の会見では疲労の蓄積を口にすることも増え、先週のパナソニック・オープン(4月30~5月2日)時には休み週をつくることも「検討しています」と話した。

一方で「夏場にピークをもっていきたい」とも語っており、稲見の関係者も「まだまだチャンスはあるし、ここからです」とさらなる飛躍を期待している。直近の目標は、まだ制覇したことのない国内メジャーでの優勝。その第1戦でもあるワールド・サロンパス・カップ(5月6~9日)が明日開幕する。これまで通りの調子で国内メジャーのタイトルも手にするのか。決戦の行方に注目していきたい。【松尾幸之介】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)