偉大な兄の背中を、そして先を行く仲間たちを追いかける-。

6日まで行われた国内男子ゴルフツアーの横浜ミナトチャンピオンシップで、石川遼の8歳年下の弟の航(わたる、23=フリー)が4日間を戦い抜いた。降雨の影響で3時間半近い中断があった最終日にスコアを大きく落とし、51位で大会を終了。「悔しいプレーになってしまった」と受け止めたが、収穫も得た。

石川航(2023年8月6日撮影)
石川航(2023年8月6日撮影)

「3日目前半ぐらいまでは上位に近い位置でプレーできた。上位で戦うために普段からやっている。あの位置でできたことは楽しかったし、またプレーしたい」

プロ2年目の若武者は、さらなる躍進を誓った。

今大会は兄の遼とともに出場。大会中にとくに会話することはなかったそうだが、兄は報道陣を通じて「もちろん応援している」とエール。その思いは弟もしっかり受け止めている。

「練習ラウンドに誘ってくれたり、普段からいろいろ教えてもらったりしている。応援してくれているんだなと伝わってくる」

直接言葉を交わさなくても、兄弟だからこそ分かり合える。

5歳でゴルフを始めたのは「兄の影響が大きい」という。ゴルフ界のスーパースターであるその存在について、「小学生のころから尊敬しているし、兄のようになりたいと思いながらずっとやってきた」。

とはいえ同じプロ選手となった今は、その考えに少し変化も出ている。

「最近は自分のゴルフをやれば良いと思うようにもなってきた」

この大会を制した中島啓太は日体大の1学年後輩、そして河本力は同級生にあたる。兄から学び、同世代の仲間たちからは刺激を受け、自らのスタイルを確立しようとしている。

昨春に大学卒業後は肉体改造に着手した。ジムに週3、4度ほど通い、食事にも気を配るようになった。現在の体重は76キロほどで、「2年で10キロちょっと増えた」。飛距離も15ヤードほど伸び、現在は平均約300ヤードという。

石川航(2023年8月6日撮影)
石川航(2023年8月6日撮影)

次に出場する大会は未定だが、ツアー出場権の優先順位を決めるための大会であるクォリファイングトーナメント(QT)が現在の「メインの試合」となる。10月下旬以降に行われるセカンドQTに向けて、「そこに照準を合わせて練習していきたい」。

まだまだ伸び盛り。真夏の横浜で手応えをつかんだ。収穫の秋に向け、汗を拭いながら1歩ずつ進んでいく。【奥岡幹浩】

◆石川航(いしかわ・わたる)2000年(平12)2月23日、埼玉県松伏町生まれ。ゴルフは5歳から。埼玉屈指の進学校・浦和高から日体大に進学し、4年でゴルフ部主将。21年12月にプロ転向。16年関東高校選手権優勝、19年日本アマ15位。趣味は音楽鑑賞、好きなアーチストはサイダーガール。身長172センチ。

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)