<男子ゴルフ:日本オープン>◇最終日◇18日◇埼玉・武蔵CC豊岡(7083ヤード、パー72)◇賞金総額2億円(優勝4000万円)

 石川遼(18=パナソニック)が「ゴルファー日本一」のタイトルを、あと1歩で逃した。通算6アンダー282で並んだ小田龍一(32)今野康晴(36)とのプレーオフでは、2ホール目のバーディーパットが惜しくもカップに蹴られ、2年連続の2位に終わった。それでも勝負どころの17番で、カメラのシャッター音に邪魔されながらバーディーを奪うなど、1万7687人の大ギャラリーの前で激闘を演出。史上最年少優勝記録の更新は来年に持ち越しとなったが「すがすがしい気持ち」と、充実感をにじませた。

 あとわずか、本当にあとわずか日本一に届かなかった。プレーオフ2ホール目のピン右奥カラーからの4メートルのバーディーパット。石川は緩やかに転がる球の行方を見ながら右腕を振り上げた。入ったと思った瞬間、球はカップに蹴られた。思わず天を仰ぎ、クラブを投げ上げた。続く小田が2メートルのバーディーパットを沈めるのを見届けると、大きく息を吐いた。

 石川

 呼吸も難しくなるぐらいのが20ホール続いて、それが終わって一気に力が抜けたようなすがすがしい気分になりました。やり切った。かなり気持ちいいです。

 あと数センチ左だったら-。そんな後悔より、日本最高峰の舞台で力を出しきったという充足感に浸った。

 首位で迎え、1打差の2位の今野と最終組で出た最終日。「いつチャンス、ピンチが来るかわからない。逃しちゃいけない。ピンにつけなきゃいけない。そういう中で気持ちをコントロールするのが難しかった」。メジャー大会ならではの難設定。その重圧の中で、肉体も、神経もすり減らすような戦いを続けた。

 6番のバンカーからの第4打では、バックスイング中にギャラリーの携帯電話のカメラシャッター音に妨害された。想定外のハプニングに、手で自分の太ももをたたき、珍しく怒りをあらわにした。

 石川

 もし初めて来た人で知らなかったら、しょうがない。あれが分かっていた上での行為だったら悲しい。本当は優勝してみなさんに言いたかった。マナーを守って見ているギャラリーがかわいそうです。

 仕切り直して打った球はグリーンを大きく越えて奥ラフへ。ダブルボギーで通算4アンダーとし、小田に並ばれた。それでも「最終的には、あのダブルボギーが大きかったのかもしれませんが、悔いはないです」。精神的な動揺を抑え、集中力を切らさず、後半でスコアを2つ伸ばして迎えた17番のバーディーチャンスに再びシャッター音が鳴った。だが、今度は仕切り直してひと呼吸置いた後、5メートルのパットをきっちりとねじ込んだ。通算6アンダーで首位に並び、プロの大会では初のプレーオフに持ち込んだ。

 初めてツアーの試合を見たのは、01年の日本オープンだった。埼玉・松伏小の卒業文集には「4年後…高校1年生、プロのトーナメントに勝つ。6年後…高校3年生、日本オープン優勝」と書いた。その目標は果たせなかったが、「昨年はやることなすことうまくいって2位。今年はなかなか自分の思うようにいかなかった。大違いです」。手応えはけた違いだった。

 今季のツアー最多となる1万7687人の観衆に死闘を刻み付けた。28年大会の浅見緑蔵の19歳9カ月7日を超える最年少優勝は来年に持ち越しとなったが、かけがえのない充実感を手にした。「悔しさがないと次にバネがない。これから出てくると思う。来週からも良いトーナメントにしたい」。残り7戦。日本最高峰での惜敗を糧に、石川は最年少賞金王に向けて再び走り出す。【阿部健吾】