プロ9年目の穴井詩(らら、28=ゴルフ5)が通算14アンダー202でツアー初優勝を果たした。首位タイから出て6バーディー、1ボギーの67で申ジエ(28=韓国)らを突き放した。持ち前の飛距離に加え、小技もかみ合っての勝利。稼げない時期は学習塾の講師をし、シード選手になってからも勝てそうで勝てない経験を重ねたが、初戴冠が所属先の大会という二重の喜びとなった。

 待望の初優勝にも、穴井に涙はなかった。「タイミングを逃しました」と照れ笑い。ゴルフ5の関係者から祝福の嵐に見舞われ、感慨に浸る間もなかった。そして「9年は長かった」と本音が漏れた。「諦めずにサポートしてくれたスタッフに感謝です」。

 10代を米国で過ごし、プロ合格後の稼げない時は語学力を生かし、学習塾でアルバイトもした。「1コマ90分で1200円くらいだった」。ツアーに出るようになるとその飛距離で注目され、優勝争いも演じたが、あと1歩届かないことが続いた。最も悔しかったのは14年ツアー選手権リコー杯。プレーオフの末にテレサ・ルー(台湾)に屈した。「いろんな負け方を経て精神面が鍛えられた」と振り返る。

 同時にプロ同期に森田理香子、菊地絵理香ら優勝経験者が多く「みんなが勝てるんだから私も勝てる」と自分に言い聞かせた。

 昨年から成田美寿々らと同じ井上透コーチ(43)に指導を受ける。昨季はイーグル数ランク1位になったが、今季は同コーチに「イーグルは5位でいいから、バーディー奪取率を上げよう」と助言された。これまでパー5では可能な限り2オン狙いだったが、小技の向上もあってあえて第3打勝負を選ぶことも増えた。この日も5番パー5の第2打が残り230ヤードと「以前だったら狙っていた」のを残り78ヤードに刻み、第3打でピン1メートルにつけてライバルたちから先手を奪った。

 次の目標に「(国内)メジャーが欲しい」。そのチャンスが次週の日本女子プロ選手権だ。「ただ、問題が1つあるんですよ」。練習ラウンドが完全予約制なのを知らなかった上、穴井は今大会に集中するあまり予約してなかった。それでも申やイ・ボミら実力者に勝った自信と勢いで、ビッグタイトルを狙いにいく。

 井上コーチは今大会は成田のキャディーとして会場にいた。穴井のホールアウトを待って祝福すると同時に「いい勝ち方だった。フロックではない優勝」と称賛した。優勝スコアは11、12アンダーと予想しており「それを(14アンダーで)超えたのだから、本当にいいゴルフをしたということ」。コースもちょうど穴井の飛距離に合っていたとも分析した。【岡田美奈】

 ◆穴井詩(あない・らら)1987年(昭62)11月11日、愛知県生まれ。名前の由来は「音楽好きの子に」。11歳からゴルフを始め、父幸二さん(61)の仕事の都合で渡米。ノバサウスイースタン大に進むも、中退してミニツアーに挑戦。その後帰国して滋賀・富士スタジアムGCに入り、08年にプロ合格。12年賞金ランク46位でシード権獲得。14年日本女子プロ選手権2位など。昨年賞金ランク19位。270ヤード超の飛距離が武器。165センチ、58キロ。