東北福祉大1年の金谷拓実(19)が、90年ぶりとなるアマチュア優勝を視界に捉えた。首位と7打差27位から出て1イーグル、5バーディー、2ボギーでこの日のベストスコアに並ぶ65。通算5アンダーの205で首位と5打差2位につけ、今日15日の最終日は大学の先輩で2度目優勝を狙う首位の池田勇太(31)と最終組で対決する。逆転すれば27年の赤星六郎以来90年ぶりのアマ優勝で、19歳4カ月22日と最年少記録も89年ぶりに更新する。

 手を伸ばせば届くところに歴史的偉業が迫った。金谷は「驚いています」と照れくさそうにほほ笑んだ。27位から出ると、いきなり1番でボギー。諦めそうになった心を奮い立たせたのは、7番パー5のイーグルだ。残り220ヤードを2オンさせ、ピン右手前から8メートルを沈める。これで自信が湧き上がった。後半は10番から3連続バーディー。気がつけばまさかの2位だ。90年ぶりのアマ優勝と、史上最年少優勝がうっすら見えた。

 「予選通過がいっぱいいっぱいだと思っていた。フェアウエーに(球を)置くことができて、そこからのアイアンも良かった。イーグルで波に乗れました」

 大学では宮里藍、松山英樹ら多くの名選手を育てた川崎菊人コーチ(元東北高監督)の指導を受ける。そんな縁もあり入学直後の4月には、松山と20年東京五輪のゴルフ会場となる埼玉・霞ケ関CCでラウンドした。「飛距離がすごくて40ヤードも置いていかれた」と刺激を受け、肉体改造に着手。寮で食生活を改善し、スクワットと全速力の走り込みをこなす日々。ひ弱だったが約10キロも体重が増え、現在67キロ。飛距離は20ヤード伸びた。

 首位と5打差。最終日最終組で一騎打ちするのは大学の先輩で、昨季賞金王の池田だ。逆転は簡単ではないが、平成10年生まれの現代っ子は「楽しみですね。(勝負は)最後のハーフからですね」と目を輝かせる。勝てば日本ツアーでは11年松山以来のアマ優勝。日本オープンに限れば、金融恐慌が起きた27年の第1回大会の赤星以来90年ぶりだ。さらに第2回大会の浅見緑蔵を上回る史上最年少優勝もかかる。アマ期待の星が、歴史の扉をこじ開ける。【益子浩一】

 ◆金谷拓実(かなや・たくみ)1998年(平10)5月23日、広島県生まれ。5歳でゴルフを始める。広島国際学院高時代に頭角を現し、15年日本アマで17歳51日の史上最年少優勝。同年の日本オープンは予選を2位で通過し11位で史上最年少ローアマ。今年4月に東北福祉大へ。ドライバー平均飛距離270ヤード。ベストスコアは63。好きなスポーツ選手はヤンキース田中将大。170センチ、67キロ。