ルーキーの渋野日向子(20=RSK山陽放送)が、ツアー初優勝を国内4大大会で飾った。4バーディー、3ボギーの71で回って、同じ首位から出たペ・ソンウ(韓国)を1打振り切り、通算12アンダーの276で快挙を遂げた。

20歳178日での優勝は大会史上最年少。初Vがメジャー大会は16年の畑岡奈紗に続く日本人8人目など記録ラッシュとなった。来年以降の3年シード権も獲得した。

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笑顔が涙に変わった。ウイニングショットを沈めた渋野は、「黄金世代」の同期や、先輩の大出からウオーターシャワーの祝福を受けた。初めて優勝争いの緊張が消え、涙があふれた。表彰式後、3日連続の会見場に来ても「生まれて一番うれしいのかな。まだ緊張しています」とぎこちない笑顔をつくった。

11アンダーで並んで始まったペとの一騎打ち。出だしの1番でボギーをたたき、渋野が先に崩れた。2番でバーディーを取って追いついたが、その後はまるでマラソンのような抜きつ抜かれつのデッドヒート。「いつも通り、いつも通りと言い聞かせたけど、昨日ほどの笑顔は出なかった」と、崩れそうになる自分と必死に戦っていた。

そんな渋野に、ゴルフの神様はほほえんだ。12アンダーで並んでいた16番で、ペが突然崩れダブルボギー。残り2ホールで2打差抜け出した。最後はバーディーを取ったペに対し、楽々パーで1打差で競り勝った。ツアー初勝利がメジャーという快挙のほかに、この大会での外国人連勝記録も4で止めた。「私で良かったんでしょうか?」と困ったように苦笑した。

98年度生まれの「黄金世代」に入るが、プロテストは2度目の合格で、勝、新垣、小祝らより1年遅れでプロデビューした。勝や新垣がツアー初優勝を飾った昨年は、下部ツアーで苦戦。その中でつかんだのが「笑顔」だった。「去年までは喜怒哀楽を出すタイプだったけど、感情を出すとスコアを落とした。いつも笑顔でいようと気をつけるようになった」と言う。

体操教室で指導する母伸子さん(51)は、決戦の朝、教室の子どもたちがテレビで渋野を応援する動画を送ってくれた。「いつも笑顔でいなさい」と諭してくれた母に、母の日にビッグなプレゼント。「こんなに早く優勝できるとは思わなかった。1勝だけでなく、2勝も3勝もできるように頑張りたい」。早くも次を見据えた。【桝田朗】

◆渋野日向子(しぶの・ひなこ)1998年(平10)11月15日、岡山県岡山市で3人姉妹の2番目として生まれる。幼稚園時の夢は仮面ライダーとアリエルになること。8歳でゴルフとソフトボールを始める。小6でソフトボール投げ58メートルで県2位。ゴルフでは、中1から岡山県ジュニア3連覇。18年2度目の挑戦でプロテスト合格。父・悟さんは砲丸投げ、円盤投げで国体2位。母・伸子さんはやり投げでインターハイ出場。165センチ、62キロ。