今月から土曜日は「ゴルフ流 Education」。国内ツアー通算64勝、国内外で数々の名勝負を演じた“レジェンド”中嶋常幸プロ(65)が、子育て世代、指導者へメッセージを送ります。畑岡奈紗プロもアマ時代に指導を受けた「トミー・アカデミー」を主宰。今回は同アカデミーでの基本である「あいさつ」についての話題です。

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僕が主宰する「トミー・アカデミー」では、まずジュニアに「あいさつ」を徹底させます。ゴルフ場で会うすべての人に「おはようございます」と、あいさつできるように。以前から「あいさつできない子ども」が増えたといわれますが、最近は「あいさつできない大人」も増えた。若い人や子どもが何を考えているかわからないから、大人も声を掛けられなくなってしまったようです。

僕のアカデミーの主題は「世界で通用するゴルファーの育成」ですが、副題は「いじめをしない子、いじめられても負けない子に育てる」です。「いじめ」は心のバリアーの問題とも思います。バリアーの内側(自分側)の人以外は除外しようという意識なのかもしれないと。あいさつをかわすようになれば、次は「最近の調子は?」とちょっとした会話に進めます。

一方、世の中には言葉巧みに近寄る危険な大人がいることも事実で、無防備ではいられない。「知らない人と口をきいてはいけません」と教える親もいるかもしれません。でも、それで子どもが狭いバリアー、殻に閉じこもり続けていいのか疑問です。

必要に応じてバリアーを「開けたり」「閉めたり」することを身につけてほしいと、僕は思います。

よく知らない人に対し、子どもは子どもなりに観察しています。その人と、親(または自分が信頼する大人)との会話や距離感で、自分がどうしたらいいか感じ取っているはずです。

ゴルフの魅力の1つは、いろんな人に出会えることです。一般ゴルファーでもゴルフを通じて人脈を広げたという話は珍しくない。心のバリアーをうまく開け閉めして、豊かな人間関係につなげてほしいです。(中嶋常幸)

◆中嶋常幸(なかじま・つねゆき)1954年(昭29)10月20日、群馬県生まれ。父巌氏の英才教育で腕を磨き、73年日本アマで最年少優勝。75年プロ入り。翌年初勝利を挙げ、13年スターツシニアまで国内ツアー通算64勝、レギュラーツアー賞金王4回。青木功、尾崎将司とともに「AON時代」をつくる。88年全米プロ3位など、米メジャー4大会すべてでトップ10入りした初の日本選手、史上初の日本タイトル7冠達成。19年1月日本プロゴルフ殿堂入り。一方で12年から「トミー・アカデミー」を主宰し、畑岡奈紗らを育てた。静ヒルズCC所属。